木の家具や器を見て、「木目がきれいだ」と感じたことがある人は多いでしょう。ところが、その木目が柾目(まさめ)なのか板目(いため)なのか、特徴的な杢(もく)なのかと聞かれると、途端に分からなくなるかもしれません。
木目を見るときは、表面の模様だけでなく、年輪の向き、木口(こぐち)、木取りまで確認するのが基本です。柾目・板目・杢の違いが分かると、家具や器の見た目だけでなく、作り手が素材をどのように選び、作品の中へ配置したのかを考える手掛かりが増えます。
ただし、最初に押さえておきたいのは、柾目・板目と杢は同じ階層の「3種類の木目」ではないということです。柾目と板目は主に材面や木取りに関わる言葉であり、杢は木材の組織や木理(もくり)などによって材面に現れる特徴的な模様を指します。
この記事では、柾目と板目の違い、追柾(おいまさ)、虎斑(とらふ)・玉杢(たまもく)・縮杢(ちぢみもく)などの杢、木口の見方、木材の反りや寸法変化との関係、そして木工品を購入するときの確認ポイントまで整理します。
目次
木目はどこを見れば分かる?まず「木口・年輪・材面」を見る
木目を見分ける第一歩は、表面の模様だけを見ることではありません。木口に現れる年輪と材面の関係を見ると、柾目と板目がなぜ異なる表情になるのかを理解しやすくなります。
木目・木理・杢は同じ意味ではない
まず整理しておきたいのが、「木目(もくめ)」「木理(もくり)」「杢(もく)」の違いです。日常会話では近い意味で使われることもありますが、木材を正確に理解するうえでは区別した方が分かりやすくなります。
日本木材学会の材質用語集では、木理を木材構成要素の配列と走向に関する言葉とし、木理によって材面に生じる模様を「木目」としています。また、杢は木材構成要素の配列の不規則性などに基づいて材面に現れる装飾的な模様として整理されています。
(参照:材質用語集|一般社団法人日本木材学会)
木目・木理・杢の基本整理
「木理」は木材の組織がどの方向へ配列しているか、「木目」はその木理などによって材面に現れる模様です。「杢」はその中でも、木材の成長や組織、木理などに由来する特徴的・装飾的な模様を指します。
| 用語 | 読み方 | 基本的な意味 |
|---|---|---|
| 木理 | もくり | 木材を構成する要素の配列や走向 |
| 木目 | もくめ | 木理などによって材面に現れる模様 |
| 柾目 | まさめ | 主に放射方向の材面に現れる木目 |
| 板目 | いため | 主に接線方向の材面に現れる木目 |
| 杢 | もく | 木材組織や木理などによって現れる特徴的・装飾的な模様 |
| 木口 | こぐち | 幹の軸方向に対して直角に切った断面 |
たとえば「玉杢という種類の木」が存在するわけではありません。玉杢は樹種名ではなく、材面に現れる杢の一つです。
同様に、柾目と板目も異なる樹種を意味するものではありません。同じ一本の木でも、どの位置からどの方向に材を取るかによって、異なる材面が現れます。
木口を見ると木取りが理解しやすい
家具や木の器を見るとき、可能であれば側面や底面にある木口を見てみてください。
日本木材学会では、木口を「幹の軸に対し、直角に切った時の木材の断面」としています。木口では年輪の向きを確認しやすいため、広い材面の木目だけを見るよりも木取りを理解する手掛かりになります。
(参照:木材学用語集|一般社団法人日本木材学会)
丸太を輪切りにすると、中心を囲むように年輪が重なっています。その丸太から、中心から外側へ向かう放射方向に近く材を取れば、広い材面では年輪が比較的平行な線として現れやすくなります。これが柾目を理解する基本です。
一方、年輪に沿う接線方向に近く材を取ると、材面には山形や曲線状の木目が現れやすくなります。これが板目です。
「この模様は何という名前だろう」と考える前に、「この板は丸太のどこから、どの向きで取られたのだろう」と見る。この順番にすると、木目は暗記する用語ではなく、木の構造を読むための情報になります。
柾目・板目・追柾の基本
日本木材学会では、板目面を樹幹や木材の接線断面に対する慣用語、柾目面を放射断面に対する慣用語として整理しています。また、柾目と板目の中間的な木取りや材面を追柾(おいまさ)と呼びます。
(参照:木材学用語集|一般社団法人日本木材学会)
| 種類 | 木取り・材面 | 木目の見え方の傾向 | 見るポイント |
|---|---|---|---|
| 柾目 | 放射方向に近い材面 | 平行・直線状に見えやすい | 木口の年輪が材面に対して立つ方向かを見る |
| 板目 | 接線方向に近い材面 | 山形・曲線状に見えやすい | 木口の年輪が材面に沿う方向かを見る |
| 追柾 | 柾目と板目の中間 | 直線と曲線の中間的な表情 | 柾目・板目の二択に無理に分類しない |
実際の木工品では、教科書の図のように完全な柾目と完全な板目だけが現れるわけではありません。木は均一な円柱ではなく、年輪の形や成長状態も一本ごとに異なります。
そのため、初心者ほど「これは絶対に柾目」「これは絶対に板目」と一部分だけで断定する必要はありません。木口や材面全体を見ながら、柾目寄り、板目寄りという見方も含めて理解すると、実物に対応しやすくなります。
柾目と板目は何が違う?違いは「模様」だけではない
柾目と板目は、主に丸太から材を取る方向の違いによって異なる材面が現れます。違うのは見た目だけではなく、木材の寸法変化や用途を考えるうえでも重要な手掛かりになります。
柾目はなぜ平行に見えやすいのか
柾目では、丸太の中心から外側へ向かう放射方向に近い面が材面になります。そのため、長い板の表面では年輪が比較的平行な線として見えやすくなります。
家具の扉、箱、盆などで柾目を見ると、木目の方向がそろい、視線が一方向へ流れるような印象を受けることがあります。
ただし、「柾目=模様が少ない」という理解は正確ではありません。
樹種や木材組織によっては、柾目面に後述する虎斑のような特徴的な杢が現れることがあります。柾目を見る際は、平行な年輪だけでなく、その間に現れる光沢や斑模様まで観察すると、木材組織と材面の関係が見えてきます。
板目はなぜ山形・曲線状に見えやすいのか
板目は、丸太の年輪に沿う接線方向に近く切られた材面です。
円弧状に重なった年輪を縦方向に切るため、広い材面では山形や波形、筍(たけのこ)のような曲線として木目が見えることがあります。
家具の天板などでは、中央から外側へ木目が大きく広がっていくような表情が見られる場合があります。この動きのある模様は板目の魅力の一つであり、欠点ではありません。
工芸品を見る際に、「直線的な柾目の方が上品だから上」「板目は派手だから下」といった序列を持ち込む必要はありません。作品の形や用途に対して、どの材面を使うことが適切だったのかを見る方が重要です。
追柾とは何か
追柾(おいまさ)は、柾目と板目の中間的な木取りや材面を指します。
日本木材学会の木材学用語集でも、追柾は「板目と柾目の中間的なもの」、追柾面は「柾目面と板目面の間の中間的な材面」と整理されています。英語では「rift-sawn」が対応語として示されています。
(参照:木材学用語集|一般社団法人日本木材学会)
実物では、柾目と板目の特徴が途中で移り変わっていくような材面も珍しくありません。すべてを二択にするのではなく、追柾を知っておくと、木材をより連続的に理解できます。
柾目の方が板目より「良い」とは限らない
柾目材は、同じ樹種や寸法などの条件では、木取り上の制約から板目材よりも材を得にくい場合があります。しかし、それは「柾目の方が板目より優れた木材」という意味ではありません。
大きく動く板目を天板や正面に生かす作品もあれば、直線的な柾目を造形の中心に据える作品もあります。
木材において重要なのは「どちらが上か」ではなく、「何に使い、どう見せるために、その木取りが選ばれたのか」です。
この視点は工芸を見るうえで特に大切です。木目を希少性や価格だけのランキングとして理解すると、用途に応じて素材を使い分けてきた木工の知恵が見えにくくなってしまいます。
反り・収縮との関係はどう考える?
木材は乾燥や吸湿によって寸法が変化しますが、その変化量はすべての方向で同じではありません。
森林総合研究所の木材収縮に関する試験資料では、木材について接線方向と半径方向の収縮が区別して測定されています。また、森林総合研究所の大径材加工に関する資料でも、木材の乾燥に伴う収縮量は軸方向、半径方向、接線方向の中で接線方向が大きいことが説明されています。
(参照:木材の収縮性試験|森林総合研究所)
(参照:大径材の効率的加工技術の開発|森林総合研究所)
こうした木材の方向による寸法変化の違いが、柾目材と板目材の変形傾向を考える背景の一つになります。
ただし、「柾目だから反らない」「板目だから必ず反る」と覚えるのは正確ではありません。実際の反りや割れには、樹種、木の部位、含水率、乾燥方法、部材寸法、接合方法、使用環境など複数の条件が関係します。
木取りは重要な要素ですが、それだけで完成品の安定性を断定することはできません。
「杢」とは何?虎斑・玉杢・縮杢をどう見る?

杢は、柾目や板目そのものではなく、木材の成長、組織、木理などに由来して材面に現れる特徴的・装飾的な模様です。杢の種類によって成因や現れやすい材面が異なります。
日本木材学会では、杢を木材構成要素の配列の不規則性などに基づいて材面に現れる装飾的模様として整理しています。杢の成因は一つではなく、成長の不均一性、木理、広い放射組織などさまざまです。
(参照:材質用語集|一般社団法人日本木材学会)
虎斑
虎斑(とらふ)は、広い放射組織が放射断面に現れることなどによって見られる特徴的な杢です。日本木材学会では、英語として「ray fleck」「silver grain」が示されています。
(参照:木材学用語集|一般社団法人日本木材学会)
実物では、細長い斑点や帯のような模様が木目を横切って見えたり、光の角度によって異なる光沢を示したりすることがあります。
虎斑は、「柾目=まっすぐで単調」というイメージを崩してくれる好例です。材面を変えることで、木材内部の異なる組織が視覚的な特徴として現れます。
玉杢
玉杢(たまもく)は、円や楕円が連なるように見える杢です。
日本木材学会では、成長の不均一性に起因し、成長輪が円または楕円状に材面、主として接線断面に現れる杢として整理されています。
(参照:材質用語集|一般社団法人日本木材学会)
玉杢について「コブから生まれる模様」とだけ説明されることがありますが、専門的には玉杢と「こぶ杢」は区別して整理されています。そのため、玉杢=コブと単純に覚えない方が正確です。
工芸品で玉杢を見る際は、模様の珍しさだけでなく、作り手がその模様を作品のどこへ配置しているかにも注目してみてください。
縮杢・波状杢
波状杢(はじょうもく)は、波状木理によって材面に波のような模様が現れる杢です。日本木材学会では、そのうち細かなものを縮杢(ちぢみもく)と整理しています。
(参照:材質用語集|一般社団法人日本木材学会)
つまり、縮杢と波状杢はまったく別の種類というより、波状杢の中でも細かなものを縮杢と呼ぶ関係として理解すると分かりやすいでしょう。
また、バイオリンなどの背板として使われる波状杢の材について「バイオリン杢」「fiddle back figure」といった名称が使われますが、これは「希少な縮杢ならすべてバイオリン杢」という意味ではありません。
縮杢や波状杢では、見る角度や光の方向によって模様の強弱が変わって見える場合があります。オンライン写真だけでは、実物の表情を十分につかみにくい木材がある理由の一つです。
杢は「多いほど価値が高い」のか?
杢は木材や作品の評価に影響することがありますが、杢が多い、派手である、珍しいという理由だけで作品の価値を決めることはできません。
樹種、材の大きさ、状態、木取り、加工精度、仕上げ、作品の造形、作家性、流通条件など、実際の評価には複数の要素が関係します。
工芸品を見るのであれば、杢の名称を当てることよりも、次のような点を見た方が作品への理解につながります。
- 特徴的な模様が作品のどこに配置されているか
- 作品の形と木目の方向がどう関係しているか
- 複数の部材で木目をそろえているか、変化させているか
- 表面仕上げによって木の表情がどう見えているか
- 用途に必要な構造や使いやすさと両立しているか
| 名称 | 読み方 | 見た目の特徴 | 主な成因・特徴 | 観察ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 虎斑 | とらふ | 斑点や帯状の模様 | 広い放射組織などが放射断面に現れる | 柾目面と光沢の関係を見る |
| 玉杢 | たまもく | 円・楕円状の模様 | 成長の不均一性など | 接線断面での模様の配置を見る |
| 波状杢 | はじょうもく | 波状の模様 | 波状木理 | 光の方向による見え方の変化を見る |
| 縮杢 | ちぢみもく | 細かな波状の模様 | 細かな波状杢 | 細かな揺らぎと仕上げの関係を見る |
| 鳥眼杢 | ちょうがんもく | 小さな眼のような模様 | 局所的な繊維走行の変化など | 模様の分布を見る |
| リボン杢 | リボンもく | 帯・縞状の模様 | 交錯木理など | 放射断面に現れる縞を見る |
※杢の呼称や範囲には、専門分野や商取引上の慣用によって表現差が生じる場合があります。本記事では、日本木材学会の用語整理を基本としています。
木目から職人の「木取り」をどう読む?
木工では、樹種を選ぶだけでなく、一本の材のどこを取り、どの面を作品の正面にするかも設計の一部です。木目を見ることは、その判断を考える入口になります。
編集長コメント
工芸品を見て「木目がきれい」で終わってしまうと、その作品の重要な部分を一つ見落としていることがあります。私がより気になるのは、天然の模様そのものより、作り手が「どの部分を残し、どの面を見せると決めたのか」です。木目は自然がつくりますが、それを作品の構成に変えるところには人の判断があります。
作品の「正面」にどの木目を置いているか
木工作品を見るとき、「なぜこの面が正面なのだろう」と考えてみてください。
大きく動く板目を中央に置いた作品もあれば、細かな柾目を主役にした作品もあります。同じ一枚の板でも、中央と端では木目の表情が変わります。
天然木は人が模様を描いた素材ではありません。しかし、どの材を選び、どの位置を切り出し、どちらを表に向けるかは人が決めています。
木工における木目の美しさは、天然素材の偶然と、作り手の選択が交差するところにあります。
木目をつなぐ/あえて変化させる
箱や家具など、複数の部材で構成される作品では、一枚ずつの木目だけでなく、隣り合う材との関係も見てみましょう。
木目が連続して見えるように材を配置する場合もあれば、方向を変えて各部材の輪郭を際立たせる場合もあります。
すべての木目をそろえればよいわけではありません。作品の構造や視覚的なリズムに合わせて、あえて方向を変えることも考えられます。
つまり木目は、素材の模様であるだけでなく、作品の「構図」をつくる一要素でもあります。
器の曲面では木目はどう見える?
木の器では、平らな板とは少し違った見方が必要です。
椀や鉢の表面は曲面になっているため、同じ一つの作品でも見る位置によって木目の方向や広がり方が変わります。正面で直線的に見えた木目が、器を回転させると大きく曲がって見えることもあります。
手に取れる作品であれば、一方向から見るだけではなく、一周回してみてください。底面や高台付近も見ると、材が作品の中をどのように通っているかを想像する手掛かりになります。
木目を見ることは、平面の模様を眺めることではなく、立体の中を木の組織がどう走っているかを考えることでもあります。
指物や家具では部材ごとの木目を見る
指物(さしもの)や家具は、木目を見る練習に適しています。
天板、側板、框(かまち)、引き出し、脚など、役割の異なる複数の部材が組み合わされているためです。
天板はどのような木目なのか。引き出しの正面は隣の部材とつながって見えるか。側板では木目の向きを変えているか。こうして一つずつ見ると、素材選択と構造の関係を考えやすくなります。
木材の選択と木組みそのものをさらに知りたい場合は、釘や金具に頼らない接合技術を中心に解説した江戸指物の記事も参考になります。
異なる木材の色や性質を組み合わせ、それ自体を幾何学模様へ変えていく木工としては、箱根寄木細工(はこねよせぎざいく)も木を見る視点を広げてくれます。
木目は強度・反り・用途とどう関係する?
木目や木取りは木材の性質を考える重要な手掛かりですが、それだけで強度や反り、品質を判断することはできません。樹種、乾燥状態、部材寸法、加工、構造、使用環境なども合わせて考える必要があります。
木材には方向によって性質の違いがある
木材は、どの方向でも同じように変形する均質な材料ではありません。
樹木には、幹に沿う軸方向、中心から外側へ向かう半径方向、年輪に沿う接線方向があります。森林総合研究所の資料でも、木材の収縮性は接線方向、半径方向などを区別して測定されています。
(参照:木材の収縮性試験|森林総合研究所)
この方向性を知ることで、柾目と板目が単なる模様の違いではなく、木材内部の構造と関係する分類であることが分かります。
柾目だから「絶対に反らない」わけではない
木材について調べると、「柾目は反りにくい」という説明を目にすることがあります。方向による収縮差を考えれば、その傾向を説明することはできます。
しかし、「比較的反りにくい傾向」と「反らない」は別です。
実際の木材の変形には、乾燥、内部応力、含水率、木の部位、部材の厚さ、接合方法、設置環境など複数の要素が関係します。
購入時に柾目か板目かだけを確認して「これは絶対に反らない」と判断するのではなく、乾燥や構造、仕上げ、取り扱いについて作家や工房から説明を受けることが大切です。
用途に応じて木取りを選ぶ
柾目と板目に単純な上下関係がないことを示す具体例として、秋田杉の桶(おけ)と樽(たる)があります。
林野庁東北森林管理局の資料では、伝統的な秋田杉の桶には柾目の材料を使い、樽には板目の材料を使う例が紹介されています。
(参照:伝統的工芸品 秋田杉の桶と樽|林野庁 東北森林管理局)
この事例の重要な点は、柾目と板目が品質のランクではなく、用途に応じて選ばれていることです。
木目を見る際には、「こちらの方が珍しいから良い」と考えるだけでなく、「なぜこの用途で、この木取りが選ばれたのだろう」と考える方が、工芸の技術を理解しやすくなります。
木目だけで強度を判断しない
木目が整っているから強い、特徴的な杢があるから弱い、といった単純な判定はできません。
木材の性能には、樹種、密度、節、繊維方向、含水率、乾燥状態、部材寸法、荷重方向など多くの条件が関係します。
また、「杢材はすべて繊維が複雑だから弱い」「杢材はすべて加工中に割れやすい」と一括りにすることも適切ではありません。虎斑、玉杢、波状杢などでは成因そのものが異なります。
木目や杢は重要な観察材料ですが、作品全体の性能や価値を一つの特徴だけで判断しないことが、木工品を見る際の基本です。
家具・器・木工作品を買うとき、木目はどう確認する?
購入時は「珍しい木目かどうか」だけで判断せず、樹種、木取り、形状、仕上げ、用途まで合わせて確認しましょう。木目を実際の選択に役立てるには、作品全体を見ることが重要です。
木工品を見る7項目チェックリスト
家具や器、作家ものの木工作品を見る際は、次の7項目を順番に確認すると整理しやすくなります。
- 樹種:何の木が使われているか
- 木口:年輪がどの方向へ走っているか
- 木目:作品の形に対してどの方向へ木目が走っているか
- 杢:特徴的な模様がある場合、作品のどこへ配置されているか
- 部材:複数の板の木目がつながっているか、方向を変えているか
- 仕上げ:漆、オイルなどによって木目がどのように見えているか
- 用途:使用方法や設置環境について必要な説明があるか
木地の木目を生かす仕上げの一つとして、拭き漆(ふきうるし)があります。木目と表面仕上げの関係を詳しく知りたい方は、こちらも参考にしてください。
作家・販売店に聞いてよい5つの質問
作家ものを購入するとき、「知識がないから質問しづらい」と考える必要はありません。むしろ、素材について確認することで、作品の背景を具体的に知ることができます。
- この作品に使われている樹種は何ですか
- 一本の木のどのような部分を使っていますか
- 木目や木取りはどのように選びましたか
- 表面はどのような仕上げですか
- 使用や保管で気をつけることはありますか
なかでも、「なぜこの材を選んだのですか」という質問は有効です。
見た目からは分からない加工性、用途、手触り、仕上がり、地域の素材との関係など、作り手が重視した理由を聞けることがあります。
工芸品を選ぶことは、完成した模様だけを選ぶことではありません。素材と技法の選択理由まで知ることで、作品を見る解像度は大きく変わります。
法人・ホテル・店舗では「個体差」をどう扱う?
ホテル、旅館、レストラン、店舗、オフィスなどへ天然木の工芸作品や家具を導入する場合は、一点を購入するときとは異なる確認が必要です。
特に重要なのが天然素材の個体差です。同じ樹種、同じデザインで制作しても、木目、色、節、杢などが完全に同じになるとは限りません。
複数客室へ同じトレーを導入する、店舗什器をシリーズで制作する、企業の記念品として木製品をまとまった数量で発注するといった案件では、次のような条件を事前に共有しておくと認識のずれを減らせます。
- 木目や色の個体差をどの程度まで許容するか
- サイズや形状をどこまで統一するか
- 仕上げや色調の基準をどう設定するか
- 追加制作や交換が可能か
- 日常のメンテナンス方法
- 木材の調達状況による仕様変更の可能性
これは天然木を工業製品のように均一化するという意味ではありません。
どこまでを素材の個性として生かし、どこからを製品仕様として管理するのか。その境界を作り手と導入側で共有することが、工芸を空間や事業に取り入れる際には重要です。
工芸ジャポニカでは、工芸作家・工房との商品開発・企画制作、ホテル・オフィス・店舗などへの工芸作品レンタルや空間活用について相談を受け付けています。木工作品を導入する場合も、木目だけではなく、用途、数量、設置環境、仕上げ、メンテナンスまで含めて検討できます。
木目と家具の関係を具体的な工芸品から見たい場合は、欅(けやき)の木目を生かした岩谷堂箪笥(いわやどうたんす)の記事も参考になります。
また、木工・木工芸に携わる作家、職人、工房の方は、工芸ジャポニカの工芸作家・職人登録から、作品掲載や企業・ブランドとの連携候補として登録を申請できます。
木目についてよくある質問
最後に、柾目と板目の優劣、杢の意味、反りとの関係など、木工作品を見る際によく生じる疑問を一問一答で整理します。
- Q. 柾目と板目はどう見分けますか?
- 表面の模様だけでなく、木口の年輪を確認すると判断しやすくなります。一般に柾目は直線的、板目は山形や曲線状に見えやすいですが、両者の中間となる追柾もあります。
- Q. 柾目と板目では、どちらが良い木目ですか?
- 一概に優劣は決められません。木取りによる寸法変化の傾向、作品の用途、必要な幅、意匠などに応じて選択されます。「柾目だから上質、板目だから下」という分類は適切ではありません。
- Q. 木目と杢は何が違いますか?
- 木目は木理などによって材面に現れる模様です。杢は、木材の成長や組織、木理などに由来して現れる特徴的・装飾的な模様を指します。柾目・板目と杢は同じ軸の分類ではありません。
- Q. 虎斑とは何ですか?
- 主に広い放射組織が放射断面に現れることで見られる斑状の杢です。英語ではray fleck、silver grainなどと呼ばれます。
- Q. 玉杢とは何ですか?
- 成長の不均一性などにより、円や楕円状の模様が主として接線断面に現れる杢です。「コブの模様」とだけ理解せず、こぶ杢とは区別して考えます。
- Q. 縮杢とは何ですか?
- 波状木理によって現れる波状杢のうち、細かなものを縮杢と呼びます。光の方向などによって模様が立体的に見える場合があります。
- Q. 木口を見ると何が分かりますか?
- 年輪が材面に対してどの方向へ走っているかを確認しやすくなり、柾目・板目・追柾など木取りを考える手掛かりになります。
- Q. 木目を見れば反りやすさが分かりますか?
- 木取りから寸法変化の傾向を考える手掛かりにはなりますが、将来の反りを木目だけで判断することはできません。樹種、乾燥、含水率、寸法、構造、使用環境なども関係します。
- Q. 同じ樹種なら木目も同じですか?
- 同じにはなりません。同じ樹種でも個体、幹の部位、成長状態、木取りによって材面の表情は変わります。天然木の木目は一点ごとに異なることが基本です。
- Q. 杢がある木材は高価ですか?
- 杢の有無だけでは価格を決められません。樹種、杢の状態、材の大きさや品質、作品の加工・仕上げ、作家性、流通経路などによって価格は異なります。
- Q. 家具や木の器を買うとき、最初にどこを見ればよいですか?
- まず作品全体の形と用途を見たうえで、樹種、木目の方向、木口、部材同士のつながり、仕上げ、使用時の注意点を確認すると判断しやすくなります。
木目について知ると、これまで「木目がきれい」で終わっていた家具や器の見え方が少し変わります。
柾目、板目、虎斑、玉杢といった名称をすべて暗記することが目的ではありません。
大切なのは、「なぜこの模様がここに現れているのか」「なぜ作り手はこの面を作品に使ったのか」と考えられるようになることです。
木には、一本の樹木として成長してきた構造があります。その木をどこで切り、どの向きで使い、どの面を作品の正面へ持ってくるかは人の判断です。
工芸を見る面白さは、自然か人かのどちらか一方だけに価値を求めることではありません。木がもともと持っていた性質と、作り手が行った選択が交差する場所を見ることにあります。
次に木の器や家具を手に取る機会があれば、正面の美しい木目だけでなく、少し横や底も見てみてください。そこには木目の名前以上に、その作品が一本の木からどのようにつくられたのかを考える手掛かりがあります。







