「ルーシー・リー展」が東京都庭園美術館で開催されると知り、会期や観覧料を確認したい方。あるいは「ルーシー・リーとは誰か」「なぜ日本でこれほど親しまれているのか」を知りたい方も多いのではないでしょうか。
ルーシー・リーは、オーストリアのウィーンに生まれ、1938年にロンドンへ移った、20世紀を代表する陶芸家です。轆轤(ろくろ)から生まれる端正な器形、釉薬(ゆうやく)による深い色彩、象嵌(ぞうがん)や掻き落とし(かきおとし)による線の表現で知られています。
ただし、ルーシー・リーを「東西をつなぐ作家」とだけ説明してしまうと、その核心を見落としてしまいます。大切なのは、東と西の要素を足し合わせたことではなく、彼女が出会った文化、素材、技法、人との関係を、自分の器形・釉薬・線へどう変換したかです。
この記事では、東京都庭園美術館で開催される「ルーシー・リー展―東西をつなぐ優美のうつわ―」の基本情報から、英国のスタジオ・ポタリーと日本のうつわ観がどのように交差しているのかまで、工芸ジャポニカの視点を交えて整理します。
編集長コメント
ルーシー・リーの作品を見るとき、私は「東西融合」という便利な言葉を少し疑ってみる必要があると感じています。見るべきなのは、どこの文化に影響を受けたかだけではありません。影響を受けたものを、どれだけ削ぎ落とし、自分の形として立ち上げたのか。その距離感にこそ、ルーシー・リーの強さがあります。
目次
ルーシー・リー展はいつ、どこで開催される?

会期は2026年7月4日(土)から9月13日(日)まで、会場は東京都庭園美術館の本館+新館です。本展は日時指定予約制で運営されるため、来館前に公式サイトでチケット情報を確認しておくことが大切です。
会期・開館時間・休館日
「ルーシー・リー展―東西をつなぐ優美のうつわ―」は、2026年7月4日(土)から9月13日(日)まで、東京都庭園美術館で開催されます。会場は本館と新館です。
開館時間は10時から18時までで、入館は閉館の30分前までです。また、8月7日・14日・21日・28日の金曜日は「サマーナイトミュージアム2026」として21時まで開館時間が延長されます。
休館日は毎週月曜日ですが、7月20日(月)は開館し、翌7月21日(火)が休館となります。夏休み期間と重なるため、来館日を決める際は、通常の月曜休館だけで判断しないよう注意してください。
(参照:ルーシー・リー展―東西をつなぐ優美のうつわ―|東京都庭園美術館)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 展覧会名 | ルーシー・リー展―東西をつなぐ優美のうつわ― |
| 会期 | 2026年7月4日(土)〜9月13日(日) |
| 会場 | 東京都庭園美術館 本館+新館 |
| 所在地 | 東京都港区白金台5-21-9 |
| 開館時間 | 10:00〜18:00、入館は閉館30分前まで |
| 夜間開館 | 8月7日・14日・21日・28日は21:00まで開館 |
| 休館日 | 毎週月曜日。ただし7月20日は開館、7月21日は休館 |
| 予約 | 日時指定予約制 |
観覧料とチケット予約方法
観覧料は、一般1,400円、大学生1,120円、高校生・65歳以上700円です。団体料金も設定されていますが、団体は20名以上で事前申請が必要です。中学生以下は無料で、予約不要とされています。
身体障害者手帳、愛の手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、被爆者健康手帳をお持ちの方と、その介護者2名も無料です。これらの無料対象者についても予約不要とされていますが、手帳の提示が必要です。
本展は日時指定予約制です。一般来館者は、来館前にオンラインチケットを購入するのが基本になります。ただし、無料対象者など予約不要のケースもあるため、必ず公式サイトの最新情報を確認してください。
(参照:展覧会基本情報|東京都庭園美術館)
| 区分 | 通常料金 | 団体料金 |
|---|---|---|
| 一般 | 1,400円 | 1,120円 |
| 大学生 | 1,120円 | 890円 |
| 高校生・65歳以上 | 700円 | 560円 |
| 中学生以下 | 無料 | 予約不要 |
オンラインチケットは2026年6月4日(木)午前10時から発売されています。ただし、8月7日・14日・21日・28日の金曜日17時〜21時の時間帯のチケットは、7月中に発売予定と案内されています。また、ネット環境のない来館者向けに当日券も若干枚数用意される予定ですが、数に限りがあり、来館しても購入できない場合があります。
(参照:オンラインチケット発売について|東京都庭園美術館)
アクセス・会場情報
会場は東京都港区白金台5-21-9にある東京都庭園美術館です。本館は1933年に朝香宮家の自邸として竣工したアール・デコ建築で、新館とともに展示空間として使われます。
この会場の性格は、本展を読み解くうえで重要です。ルーシー・リーの器は、美術館の白い壁の中だけで見る作品ではありません。邸宅空間の中で見ることで、器の輪郭、余白、光との関係がよりはっきり見えてきます。
本展は、石川・金沢の国立工芸館での開催を皮切りに、東京、三重、大阪へと巡回する展覧会です。巡回先ごとの会期は次の通りです。
(参照:巡回展情報|東京都庭園美術館)
| 会場 | 会期 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 国立工芸館(石川・金沢) | 2025年9月9日〜11月24日 | 会期終了。井内コレクション寄託先での開催 |
| 東京都庭園美術館 | 2026年7月4日〜9月13日 | 旧朝香宮邸のアール・デコ建築での開催 |
| 三重県立美術館 | 2026年9月26日〜12月13日 | 東海地方での開催 |
| あべのハルカス美術館(大阪) | 2026年12月26日〜2027年3月7日 | 西日本での開催 |
巡回展は、会期や関連イベントの詳細が変更される場合があります。東京以外の会場へ足を運ぶ場合も、必ず各館の公式情報を確認してください。
ルーシー・リーとは何者か?東と西を生きた陶芸家の生涯
ルーシー・リー(1902-1995)は、ウィーンに生まれ、1938年にロンドンへ移った、20世紀を代表する陶芸家です。轆轤による洗練された形、独自の釉薬、象嵌や掻き落としによる線の表現で知られています。
ウィーンからロンドンへ―転機としての1938年
ルーシー・リーは、オーストリアのウィーンに生まれました。ウィーン工芸美術学校で轆轤を用いた制作に魅了され、陶芸の道へ進みます。東京都庭園美術館の公式解説では、彼女は作家としての地位を確立しながらも、1938年に戦争で亡命を余儀なくされ、作陶の場をロンドンへ移したと説明されています。
(参照:ルーシー・リー展 概要|東京都庭園美術館)
V&Aは、ルーシー・リーを英国のstudio potteryにおける最も影響力ある人物の一人として紹介し、洗練された簡潔な形と実験的な釉薬によって、当時の英国陶芸の支配的な美意識に挑んだ作家と位置づけています。
(参照:Lucie Rie: a Modernist revolution in British studio ceramics|Victoria and Albert Museum)
ロンドンでの再出発は、決して華やかなものだけではありませんでした。V&Aの解説では、戦時下の状況の中で、リーがファッション産業向けのボタン制作にも取り組んだことが紹介されています。後年の評価から見ると見落とされがちですが、生活と制作の不安定さの中で、彼女は陶芸家としての道をつなぎ直していきました。
ただし、その背景を過度に物語化する必要はありません。工芸作品を見るときに大切なのは、作家の人生を感動的に消費することではなく、その経験がどのように器の形や表面に変換されているかを見つめることです。
轆轤、象嵌、掻き落とし―リーの技法
ルーシー・リーの作品は、轆轤で薄く均整の取れた形を作り出し、その上に象嵌や掻き落としによる文様、釉薬による豊かな色彩や質感を重ねていく点に特徴があります。
| 用語 | 読み方 | 意味 |
|---|---|---|
| 轆轤 | ろくろ | 回転する台の上で土を成形する技法。器の輪郭や均整を生み出す。 |
| 象嵌 | ぞうがん | 異なる色の土や素材を表面に埋め込み、文様を表す技法。 |
| 掻き落とし | かきおとし | 表面の釉や化粧土を掻き取り、下層を見せて文様を表す技法。 |
| 釉薬 | ゆうやく | 陶磁器の表面にかけるガラス質の層。色、光沢、質感、防水性を生む。 |
ここで注目したいのは、リーの表面表現が「装飾」だけではないという点です。V&Aは、リーの作品において表面と形が一体となっていること、また装飾が形に従属するのではなく、全体の効果を構成していることを説明しています。
(参照:Lucie Rie: a Modernist revolution in British studio ceramics|Victoria and Albert Museum)
当時の英国陶芸では、手で挽いた跡や轆轤の筋目を残す美意識も重要でした。しかしリーは、リーチとは異なり、轆轤から生じるリング状の痕跡や制作の目立つ跡を滑らかに整え、別の手仕事の美意識を提示しました。
この選択は、単なる仕上げの違いではありません。手仕事の痕跡を見せることで工芸らしさを示すのか。それとも、痕跡を抑えることで形そのものの緊張感を立ち上げるのか。ルーシー・リーの器は、この問いを静かに投げかけています。
なぜ「国内約10年ぶりの回顧展」と言われるのか?
本展が「国内約10年ぶりの回顧展」とされる理由は、日本での受容史と、井内コレクションを中心としたまとまった作品群にあります。単なる巡回展ではなく、日本におけるルーシー・リー再評価の節目として見るべき展覧会です。
1989年から続く日本での受容史
東京都庭園美術館の公式情報では、日本においてルーシー・リーの作品は、1989年に草月会館の展覧会で本格的に紹介され、2010年、2015年の大規模な展覧会を経て広く親しまれていると説明されています。
(参照:ルーシー・リー展 みどころ|東京都庭園美術館)
ここでは「最初の紹介」と断定するよりも、「本格的に紹介された機会」として理解するのが正確です。重要なのは、1989年、2010年、2015年、そして2026年という時間の中で、日本の鑑賞者がルーシー・リーを繰り返し見直してきたということです。
工芸作家の評価は、一度の展覧会だけで定まるものではありません。作品がまとまって展示され、図録や批評が残り、コレクションが形成され、次の展覧会で再び読み直される。その積み重ねによって、作家の位置づけは社会の中で少しずつ定まっていきます。
井内コレクションと国立工芸館という存在
本展で重要な核となるのが、国立工芸館に寄託されている井内コレクションです。国立工芸館の公式情報では、井内コレクション寄託作品を中心に、ルーシー・リーの作品約120点を紹介する展覧会として案内されています。
(参照:移転開館5周年記念 ルーシー・リー展|国立工芸館)
東京都庭園美術館の公式情報でも、本展は国立工芸館に寄託された井内コレクションをはじめ、国内のルーシー・リー作品が一堂に会する機会として紹介されています。
これは、工芸作品を考える上で非常に大切な視点です。陶芸作品は、ひとつひとつが物質として存在します。破損や散逸のリスクもあります。だからこそ、作品を継続的に保存し、まとまった形で公開できるコレクションの存在は、作家理解にとって不可欠です。
コレクションとは、単に作品を所有することではありません。作品を次の鑑賞者へ渡すための文化的な仕組みでもあります。ルーシー・リー展を約10年ぶりの回顧展として見る意味は、そこにもあります。
本展がリーチやコパー、濱田庄司を併せて展示する理由とは?
本展では、リーと交流のあった作家たちの作品を併せて展示することで、彼女の陶芸を人・場所・時代の関係から読み解きます。これは、ルーシー・リーを孤立した天才としてではなく、東西の陶芸観が交差する場の中で見るための構成です。
ウィーンのヨーゼフ・ホフマンとの接点
リーがウィーンで出会った作家の一人が、建築家・デザイナーのヨーゼフ・ホフマンです。ホフマンはウィーン工房の中心人物として知られ、建築、家具、工芸、装飾を統合的に捉えたデザイナーでした。
東京都庭園美術館の主な展示作品には、上野リチ・リックスが装飾し、ヨーゼフ・ホフマンが形を手がけた《リキュールグラス》も掲載されています。これは、リーが出発点として身を置いたウィーンのデザイン環境を示す手がかりになります。
(参照:主な作品展示|東京都庭園美術館)
ルーシー・リーを陶芸だけで見ると、彼女の背景の一部しか見えません。ウィーンの工芸教育、モダンデザイン、都市の生活感覚。そうした複数の要素が、後の端正な器形や表面表現につながっています。
スタジオ・ポタリーという文脈とリーチとの違い
ロンドンに移ったリーは、バーナード・リーチやハンス・コパーなど、英国の陶芸を語るうえで欠かせない人物たちと関わっていきます。V&Aは、ハンス・コパーをリーの助手であり、のちに頻繁な協働者、生涯の友人となった人物として紹介しています。
(参照:Lucie Rie: a Modernist revolution in British studio ceramics|Victoria and Albert Museum)
ここでは、年号を細かく断定するよりも、1940年代後半以降、コパーがリーの制作環境に深く関わり、互いに影響を与え合った関係として捉える方が安全です。
また、濱田庄司については、東京都庭園美術館の公式情報で、リーと交流のあった作家の一人として紹介されています。ただし、「リーチを通じて交流した」と具体的な経路まで断定するには追加の一次確認が必要です。そのため、本記事では、濱田庄司を「リーチとともに、東洋陶磁と英国studio potteryの関係を考えるうえで重要な作家」と位置づけます。
| 作家 | 主な活動文脈 | 本展での読み方 | 陶芸観の特徴 |
|---|---|---|---|
| ルーシー・リー | ウィーンからロンドンへ | 本展の中心作家 | 轆轤の痕跡を滑らかに整え、都市的で近代的な器形を追求 |
| バーナード・リーチ | 英国と日本の陶芸交流 | 英国studio potteryと東洋陶磁の関係を考える入口 | 東洋陶磁や民藝と関わりながら、手仕事と用の美を重視 |
| ハンス・コパー | ロンドンの陶芸環境 | リーの制作環境と協働関係を考える重要作家 | 彫刻的、建築的なフォルムを展開 |
| 濱田庄司 | 日本・益子、民藝運動 | 東洋陶磁と英国陶芸の関係を考えるうえで重要な存在 | 用の美、素材感、民藝的な陶芸観を体現 |
スタジオ・ポタリーとは、量産工業品とは異なり、作家のスタジオを基盤に、素材・成形・釉薬・焼成・器形を総合的に構想する近現代陶芸の文脈を指します。必ずしも作家一人がすべての工程を完全に単独で行うという意味ではなく、スタジオという制作環境の中で、作家の美意識が総合的に反映される点が重要です。
編集長として、この比較で最も伝えたいのは、「リーチ的なわび・さび」や「東西融合」といった言葉だけで本展を語ってしまうことの危うさです。同じ時代、同じ英国陶芸の文脈にいながら、リーチとリーは異なる陶芸観を示しました。
リーチや濱田庄司が、土や手の跡、用の中に美を見出したとすれば、リーは轆轤の跡を抑え、線と釉薬と器形によって、より都市的で静かな強度を持つうつわを作りました。ここに、本展を「東と西」という単純な二項対立ではなく、複数の陶芸観が交差する場として見る面白さがあります。
旧朝香宮邸というアール・デコ建築でうつわを見る意味とは?
東京都庭園美術館の旧朝香宮邸で見ることで、ルーシー・リーのうつわは、展示ケースの中の作品ではなく、空間と響き合う器として見えてきます。この会場性は、本展の大きな見どころです。
会場としての東京都庭園美術館の特性
東京都庭園美術館の本館は、1933年に朝香宮家の自邸として竣工したアール・デコ建築です。公式サイトでも、うつわ本来の魅力を引き出す邸宅空間で、ルーシー・リーの造形世界と旧朝香宮邸の建築との対話を楽しめることが見どころとして紹介されています。
(参照:ルーシー・リー展 みどころ|東京都庭園美術館)
ルーシー・リーの器は、もともと生活の中で使われることを想起させる「うつわ」です。しかし、美術館で展示されるとき、それは鑑賞対象としての強度も持ちます。つまり、使うものと見るもののあいだに立つ存在です。
邸宅空間で見ることによって、器の輪郭、光の反射、壁や床との距離、視線の高さがより重要になります。陶芸作品は、置かれる環境によって見え方が大きく変わります。だからこそ、東京都庭園美術館という会場は、本展にとって単なる開催場所ではなく、作品の見え方を左右する重要な要素です。
編集長コメント
工芸品は、置けば価値が伝わるものではありません。どの高さで見るか、どの光で見るか、どの距離から近づくかによって、作品の印象は変わります。ルーシー・リーの作品は、静かな器だからこそ、空間の質をよく映します。これは、工芸作品を扱う際にも重要な視点です。
関連イベント・鑑賞プログラム
会期中には、複数の関連プログラムが予定されています。講演会、担当学芸員によるミニレクチャー、陶製ボタンを作るワークショップ、鑑賞会、フラットデーなどが案内されています。参加には事前申込が必要なプログラムもあるため、希望する場合は公式サイトで申込開始日と条件を確認してください。
(参照:関連イベント&プログラム|東京都庭園美術館)
| プログラム | 日時 | 内容 |
|---|---|---|
| 講演会「ルーシー・リーの作風の変遷―ウィーンからロンドンへ―」 | 2026年7月19日(日)14時〜 | 金子賢治氏による講演。リーの時代背景や造形を解説。 |
| 担当学芸員によるミニレクチャー | 2026年7月31日(金)16時〜、8月8日(土)14時〜 | 展覧会構成や作品を楽しむポイントを短時間で紹介。 |
| ワークショップ「陶製のボタンをつくろう」 | 2026年8月22日(土) | ルーシー・リーの陶製ボタンをヒントに、オリジナルのボタンを制作。 |
| アクセスプログラム「さわ会―さわっておしゃべり鑑賞会」 | 2026年7月12日(日) | 建物や作品に触れ、対話を通じて鑑賞するプログラム。 |
| ゆったり鑑賞日・ベビーアワー | 2026年7月29日(水)、8月5日(水) | 通常より入場者数を制限する日や、ベビーカー利用時間を設ける鑑賞支援。 |
来館前に確認しておきたい点を整理すると、次の通りです。
- 本展は日時指定予約制のため、事前にオンラインチケットを確認する
- 中学生以下や手帳所持者など、予約不要・無料対象の条件を確認する
- 休館日は毎週月曜日だが、7月20日は開館、7月21日は休館であることを確認する
- 8月7日・14日・21日・28日の金曜日は21時まで開館する
- 一部作品を除き撮影可能だが、フラッシュ、三脚、動画撮影、商業撮影などは禁止条件がある
- 講演会やワークショップは事前申込制のため、申込開始日を確認する
撮影については、一部作品を除き写真撮影が可能とされています。ただし、フラッシュ、レフ板、三脚、自撮り棒、望遠レンズ、動画撮影、商業目的の撮影などには制限があります。SNSで写真を公開する際も、他の来館者の写り込みには十分注意してください。
(参照:写真撮影について|東京都庭園美術館)
コレクター・ギャラリスト・海外のアート関係者はこの展覧会をどう読むべきか?
本展は、会期情報だけでなく、英国のstudio potteryと日本のうつわ観がどのように交差してきたかを確認する機会でもあります。コレクターやギャラリストにとっては、作品価値を価格だけでなく、来歴・技法・展示文脈から見るための入口になります。
スタジオ・ポタリーという評価軸
海外のアート・デザイン関係者にとって、ルーシー・リーは英国studio potteryの文脈で語られることが多い作家です。V&Aは、リーが英国陶芸に大陸的なモダニズムの感覚を持ち込み、当時の支配的な美意識に挑んだ作家であると説明しています。
(参照:Lucie Rie: a Modernist revolution in British studio ceramics|Victoria and Albert Museum)
一方、日本でルーシー・リーを見る場合、「うつわ」という言葉が重要になります。英語のtablewareだけでは、日本語の「うつわ」が持つ意味は十分に伝わりません。うつわには、食器としての用途だけでなく、余白、手触り、季節、所有の感覚、空間との関係まで含まれます。
ルーシー・リーの作品が日本で支持されてきた理由も、単に「海外作家なのに日本的だから」ではありません。用と美、器と作品、生活と展示のあいだにある曖昧で豊かな領域に、彼女の作品が自然に響いているからです。
価格や市場規模については、作品、制作年代、サイズ、状態、来歴、販売経路によって大きく異なるため、本記事では断定しません。購入や収集を検討する場合は、信頼できるギャラリーや専門家に確認し、来歴、状態、修復歴、展示歴、所蔵歴を丁寧に確認する必要があります。
海外巡回・海外発信という観点
本展は国内巡回展ですが、ルーシー・リー自身は国際的に評価されてきた陶芸家です。そのため、海外のコレクター、ギャラリー、デザイン関係者にとっても、日本で彼女の作品がどのように読み直されているかは関心の対象になります。
海外向けに説明する場合、Lucie Rieを単に「Japanese tasteに近い作家」と紹介するのは適切ではありません。むしろ、Vienna-born British studio potter、modernist ceramics、ceramic vessel、studio pottery、material cultureといった文脈を使い分ける必要があります。
工芸ジャポニカでは、工芸作家、工房、ギャラリー、文化施設、自治体、企業に向けて、取材・PR掲載、英語記事制作、海外向け発信、展示・イベント文脈の整理に関する相談を受け付けています。
工芸作品を海外へ伝えるときに大切なのは、神秘化することではありません。素材、技法、制作環境、作家の視点、展示の文脈を、海外読者にも理解できる言葉に翻訳することです。
FAQ|ルーシー・リー展についてよくある質問
ルーシー・リー展について、会期・予約・作家情報・見どころ・巡回・撮影ルールを一問一答で整理します。
- Q. ルーシー・リー展はいつから、いつまで開催されますか?
- 2026年7月4日(土)から9月13日(日)まで、東京都庭園美術館の本館+新館で開催されます。来館前には公式サイトで最新情報を確認してください。
- Q. 東京都庭園美術館へのアクセス方法と予約方法は?
- 会場は東京都港区白金台5-21-9です。本展は日時指定予約制のため、一般来館者は事前にオンラインチケットを購入するのが基本です。ただし、中学生以下など予約不要の対象もあります。
- Q. ルーシー・リーとはどのような陶芸家ですか?
- オーストリアのウィーンに生まれ、1938年にロンドンへ移った20世紀を代表する陶芸家です。轆轤成形、独自の釉薬、象嵌、掻き落としによる表現で知られています。
- Q. なぜ本展でバーナード・リーチやハンス・コパー、濱田庄司の作品も展示されるのですか?
- ルーシー・リーが出会った人、場所、時代背景を含めて、彼女の造形の源泉を読み解くためです。本展では、リーと交流のあった作家たちの作品も併せて紹介されます。
- Q. 国内で過去に開催された2010年・2015年の展覧会との違いは何ですか?
- 公式に詳細な比較が示されているわけではありませんが、本展は国立工芸館に寄託された井内コレクションを中心に構成された、国内約10年ぶりの回顧展という位置づけです。
- Q. 本展は東京以外にも巡回しますか?
- 国立工芸館での開催を経て、東京都庭園美術館で開催されます。その後、三重県立美術館、あべのハルカス美術館へ巡回予定です。
- Q. 会場内で写真撮影はできますか?
- 一部作品を除き写真撮影が可能とされています。ただし、フラッシュ、レフ板、三脚、自撮り棒、望遠レンズ、動画撮影、商業目的の撮影などは禁止または制限されています。会場スタッフの案内に従ってください。
まとめ|工芸ジャポニカとしての見解
ルーシー・リー展は、会期や観覧料を確認するだけで終わらせるには惜しい展覧会です。東京都庭園美術館で見る意味、井内コレクションを中心とする国内作品群、リーチやコパー、濱田庄司との関係、そしてstudio potteryと日本のうつわ観の交差。これらを合わせて見ることで、本展は単なる回顧展ではなく、陶芸をどう見るかを問い直す機会になります。
工芸ジャポニカとして特に強調したいのは、ルーシー・リーを「東西をつなぐ作家」という言葉だけで回収しないことです。彼女の作品が今も強く見えるのは、東と西を混ぜたからではありません。出会ったものを選び、削ぎ落とし、自分の器形・釉薬・線へと変換したからです。
工芸を見ることは、素材や技法を知ることに加えて、作家が何を受け取り、何を残し、何を消したのかを考えることでもあります。ルーシー・リー展は、その視点を育てるための、非常に豊かな入口になるはずです。




