京都・西陣の織りの構造や工房の風景を、身につけられる金属の造形へ変えたジュエリーブランドがあります。2026年9月、パリでデビューした「ARCELF(アークエルフ)」です。
工芸を背景に持つジュエリーの魅力は、完成品の造形に加え、その着想源や作り手との関わりにもあります。どのような工芸と出会い、何を受け取り、どのように新しい作品へつなげたのか。その背景を知ることで、作品の見え方も広がります。
ARCELFのファーストコレクション「TSUZURE – Loose End」は、西陣織の布をそのまま装飾に使ったものではありません。張り渡された経糸(たていと)、不揃いに並ぶ巻糸、糸が織り重なることで生まれる光、職人の手の動きなど、工房で目にした構造や表情をジュエリーへと再構成しています。
この記事では、着想源となった西陣爪掻本綴織(にしじんつめかきほんつづれおり)の技法、コレクションの造形、協業する工房と職人、そしてARCELFが目指す、作品が選ばれることで工芸の現場へ価値が巡る関係を紹介します。

画像提供:ARCELF
目次
ARCELFとは——パリで始動した「日本の美の断片を再編集する」ジュエリーブランド
ARCELFは、職人の手仕事、日本各地の風景、受け継がれてきた素材や記憶など、日本の美の断片を現代のジュエリーへ再編集する日本発のブランドです。ファーストコレクションは、京都・西陣の綴織工房との協業から生まれました。
運営会社は株式会社ARCELF、Founder / Designerは京都出身の藤井由香里(ふじいゆかり)氏。ブランドコンセプトとして「Re-Edit Fragments — 美の断片の編集」を掲げています。
(参照:About us|ARCELF)
ここでいう「断片」とは、職人の手仕事、日本各地の風景、受け継がれてきた素材や記憶などを指します。ファーストコレクションではさらに、工房で目にした道具や、制作の過程に現れる糸の構造や光景にも目を向けています。
すべてのコレクションを一つの工芸との出会いから始め、産地や工房を訪ねる。素材や技術だけでなく、土地の文化や職人の考え方に触れ、それらを現代のジュエリーへ再構成することが、ARCELFの基本姿勢です。
「再編集」という言葉には、工芸の意匠をそのまま写し取らないという立場が表れています。ファーストコレクションでは、工房に流れる光や、糸が重なる構造、職人の手仕事から見えてくる表情などをすくい取り、異なる素材と用途へと再構成する試みが見られます。
藤井氏は、テキスタイルデザイナーの母や呉服(ごふく)に携わる親族の影響を受け、幼少期から織物や工芸に親しんだと紹介されています。ISSEY MIYAKEで販売とVMDに携わった後、編集者・ライターとして独立。ファッションメディアやブランドメディアで企画、取材、執筆、編集を手がけ、日本各地の工房を取材してきました。
工芸を取材して伝えるだけでなく、仕事が継続的に生まれる仕組みをつくりたいという問題意識から、2026年1月にARCELFを設立したと説明されています。経歴に関する記述はARCELFの公式プロフィールおよび発表資料に基づきます。
(参照:Founder / Designer 藤井由香里|ARCELF)
デビューを飾った国際展示会「Bijorhca Paris」と選抜ゾーン「BRILLIANT」
ARCELFがブランドデビューの舞台としたのは、2026年9月5日から7日まで、パリのParis Expo Porte de Versaillesで開催される国際ジュエリー見本市「Bijorhca Paris(ビジョルカ・パリ)」です。
Bijorhcaは、ジュエリー、時計、貴金属アクセサリーを専門とするフランスの国際見本市です。主催者は、完成品を扱うブランドやデザイナーに加え、素材、部品、サービスなどの事業者が集まり、バイヤーや業界関係者が商談や情報収集を行う場として紹介しています。
(参照:Bijorhca Paris|WSN Group)
ARCELFの発表によると、同ブランドは選考を経たブランドで構成される「BRILLIANT」エリアに出展し、「TSUZURE – Loose End」を発表しました。同日には公式オンラインストアも公開されています。
(参照:ARCELF、2026年9月5日にパリでローンチ|ARCELF)
国内発表だけでなく、異なる文化背景を持つバイヤーや専門家が集まるパリを最初の発表場所に選んだ点には、工芸と世界をつなぐというブランドの方向性が表れています。
ただし、海外で発表すること自体が工芸の海外展開を成功させるわけではありません。西陣織の知識がない人にもジュエリーとして自立した魅力を提示し、そこから技法や工房への関心を生み出せるかが問われます。
綴織(西陣爪掻本綴織)とは、どんな技法なのか?
本記事で扱う西陣爪掻本綴織は、図案を経糸の下に置き、職人が指の爪で緯糸(よこいと)を掻き寄せながら文様を織り進める手織り技法です。
織物は一般に、縦方向へ張る経糸と、そこへ横方向に通す緯糸によって構成されます。西陣爪掻本綴織では、必要な色の緯糸を必要な部分に通し、道具として使えるように整えた指の爪で、一越(ひとこし)ずつ掻き寄せます。
西陣織工業組合も、経糸の下に図案を置き、爪で緯糸を掻き寄せて織る高度な技法として西陣爪掻本綴織を紹介しています。
(参照:西陣織を学ぶ|西陣織工業組合)
経糸を強く張るため、爪や杼(ひ)によって糸が弾かれると、工房には琴を奏でるような音が響くと奏絲綴苑は説明しています。爪は身体の一部であると同時に、素材を扱うために調整された制作道具でもあります。
(参照:つづれ織りとは?|奏絲綴苑)
用語解説:西陣爪掻本綴織
京都・西陣で受け継がれてきた綴織の技法の一つです。経糸の下に図案を置き、職人が必要な色の緯糸を指の爪で掻き寄せながら文様を織ります。計算された型紙どおりに機械的に進めるのではなく、色の調整や曲線の表現には職人の判断が反映されます。同じ図案を用いても、細部には織り手ごとの表情が現れます。
綴織は西陣以外にも存在する織物形式であり、「綴織」の正式名称が一律に「西陣爪掻本綴織」なのではありません。この記事では、ARCELFが着想源とした京都・西陣の爪掻きによる綴織を扱っています。
また、西陣織は経済産業大臣指定の伝統的工芸品です。ただし、指定対象となる西陣織全体と、その中で用いられる個別技法は分けて理解する必要があります。
(参照:近畿管内の伝統的工芸品|近畿経済産業局)
画像提供:ARCELF
綴織の価値を「豪華だから」「手仕事だから」という言葉だけで説明すると、技法の具体性が見えなくなります。見るべきなのは、素材にどれほどの力を加え、どの糸を選び、どの位置で色を切り替え、爪の加減によってどのように曲線をつくるのかという身体的な判断です。
ARCELFが着目したのも、完成した織物の華やかさだけではありません。経糸の張力、不揃いに並ぶ巻糸、糸が織り重なることで生まれる光、職人の手の動きなど、制作の過程で目にした風景でした。
「Loose End」という名称は、糸の端や未完の状態を連想させます。公式の語義として断定するのではなく、完成品の周辺にある断片へ目を向けたコレクションの姿勢を象徴する言葉として読むことができます。
工房「奏絲綴苑」と職人・平野喜久夫氏
ファーストコレクションの協業先は、京都市上京区・西陣の綴織技術保存会「奏絲綴苑(そうしつづれえん)」です。
奏絲綴苑は、綴織の技術保存を目的に、綴織職人で伝統工芸士の平野喜久夫(ひらのきくお)氏を中心とする職人たちによって組織されています。熟練職人と若手職人の交流、工房見学、織り体験などを通じて、技術の普及、継承、発展に取り組んでいます。
同工房では帯だけでなく、額装作品、掛け軸、祭幕、照明、アクセサリーなども制作しています。これは、綴織が特定の用途だけに固定された技法ではなく、形や使われ方を変えながら展開できることを示しています。
(参照:綴織技術保存会 奏絲綴苑について|奏絲綴苑)
平野氏は1939年に京都・西陣で生まれ、綴織の機屋を営む父に学びました。川島織物セルコンで長く技術を磨き、西陣織会館で後継者育成に携わった後、2011年に奏絲綴苑を設立した経歴が公式サイトに掲載されています。伝統工芸士であり、瑞宝単光章(ずいほうたんこうしょう)の受章歴も紹介されています。
ARCELFの発表資料では、平野氏は15歳で綴織の世界に入り、72年間にわたって技法と向き合ってきた職人として紹介されています。年数や日々の活動に関する記述は、ARCELFが2026年9月5日に公表した資料に基づくものです。
さらにARCELFは、技術や職人の言葉を写真や映像、音、文章で記録しています。こうした工房の記録やコレクションの背景を収めたブランドブックは、ジュエリーの購入者にも届けられます。
写真、映像、音、文章は、身体技法そのものの代わりにはなりません。それでも、工房に何があり、職人がどのように考え、異分野との対話で何が生まれたのかを残すことはできます。記録は技術を固定するためではなく、次の理解や対話を始められる状態にするために必要です。
デビュー作「TSUZURE – Loose End」は、織りの何を金属に翻訳したのか?
「TSUZURE – Loose End」は、巻糸の重なり、織物の表裏、絹糸の量感、糸が織り重なることで生まれる光など、工房で目にした構造や表情を金属のジュエリーへと再構成したコレクションです。
コレクションの作品は受注生産を基本とし、日本のジュエリー職人によって一点ずつ制作されます。公式コレクションページでは、リングのほか、ピアス、ブレスレット、ネックレスなどが紹介されています。
(参照:TSUZURE – Loose End|ARCELF)
画像提供:ARCELF
「TSUZURE — 綴 —」は、西陣の工房に重なる巻糸と、完成した織物に現れる繊細な濃淡から着想したリングです。
複数のバーを連ね、それぞれに鏡面、ヘアライン、ダイヤモンドカットなどの異なる仕上げを施すことで、光を強く返す部分と抑える部分をつくっています。その間に配されたダイヤモンドが、連続する形の中に静かな余白を生み出します。
公式商品ページでは、代表的な仕様として925シルバーに10Kゴールドの厚メッキを施したものと、合成ダイヤモンドの使用が案内されています。作品により、10K、18K、プラチナでの制作についても相談できます。
(参照:TSUZURE — 綴 —|ARCELF)
用語解説:ヴェルメイユ
ヴェルメイユは、銀を基材として表面に金を施す仕上げを指します。金の純度や厚さに関する呼称・基準は地域や仕様によって異なるため、購入時には一般名称だけで判断せず、基材、金の純度、厚さ、再加工の可否を商品情報で確認してください。
「ORI — 織 —」は、綴織の表と裏に同じ文様面が現れる構造から着想したリングです。異なる質感を持つ面が螺旋(らせん)状に続き、本来は目立たない内側にも外側と同様の加工を施しています。
ここで翻訳されているのは、織物の柄ではなく、表面と裏面が一つの構造としてつながっているという性質です。
「ORI — 織 — Spiral」は、工房で絹糸が渦を巻くように束ねられ、徐々に形をつくる様子から着想したリングです。公式説明では、アームの幅が1.5ミリメートルから3.0ミリメートルへ段階的に変化し、18石のダイヤモンドとマーキスカットのダイヤモンドを配した設計とされています。
(参照:ORI — 織 — Spiral|ARCELF)
画像提供:ARCELF
Bloomと造形を手がけた作り手(坂元勝彦氏)
「TSUZURE — 綴 — Bloom」は、工房で職人の傍らに積まれた絹糸の束が見せる、花のような膨らみから生まれたリングです。
ARCELFの発表では、5枚の花びらを一枚ずつ手作業で構築し、表面加工によって絹糸の繊細な流れを表現したと説明されています。造形は貴金属加工を手がける坂元勝彦(さかもとかつひこ)氏が担当し、甲府のジュエリー職人によって制作されます。
同資料では坂元氏を「現代の名工」と紹介しています。「現代の名工」は、卓越した技能を持ち、その技能が国内で第一人者と評価される技能者を厚生労働大臣が表彰する「卓越した技能者表彰」の通称です。
本記事では坂元氏の肩書きをARCELFの発表に基づいて紹介しています。表彰年度や正式な職種区分を確認する場合は、厚生労働省の被表彰者情報など一次資料との照合が必要です。
(参照:卓越した技能者(現代の名工)表彰制度|厚生労働省)
画像提供:ARCELF
柔らかい糸を硬い金属へ置き換えるとき、外形だけを似せれば工芸の翻訳になるわけではありません。どの質感を研磨へ置き換え、どの重なりを構造へ変え、どの光を石の配置で表現するのか。異なる素材の制約を理解したうえで、残す要素と変える要素を選ぶ必要があります。
工房には、完成品には残らない美しさがあります。使い込まれた道具、仮置きされた糸、素材の端、作業中にだけ現れる形です。ファーストコレクション「TSUZURE – Loose End」には、完成品だけでなく、制作の過程で目にした構造や表情にも着想を得ているという特徴があります。
「工芸を守るのではなく、選ばれ続ける循環をつくる」とは何を意味するのか?
工芸との協業を循環にするには、物語や意匠を借りるだけでなく、仕事、報酬、信用、記録、次の発注が工房や作り手へ戻る仕組みが必要です。
ARCELFは、工芸を過去のものとして保存するだけではなく、現代の生活で選ばれるジュエリーをつくり、そこから生まれた価値を再びものづくりの現場へ還すことを目指しています。
公式サイトでは、一つのコレクションにつき一つの工芸と向き合い、工房を訪ね、職人と対話し、技術、素材、思想、文化、美意識までを記録・編集すると説明しています。さらに、可能な限り工房と直接協業し、作品が選ばれることを工芸の現場への還元につなげる方針を示しています。
(参照:工芸を守るのではなく持続させるために|ARCELF)
工芸から着想を得ることに加え、工房との協業では、技術や制作背景について対話し、それぞれの役割や関わり方を共有することが大切です。ARCELFのファーストコレクションでも、着想源となる工房と、ジュエリーの造形・制作を担う作り手が紹介されています。
今回、公開情報から確認できる関係者の役割は次のように整理できます。
| 関係者 | 公開情報から確認できる役割 |
|---|---|
| ARCELF | 工房の調査、編集、デザイン、ブランド運営、販売、発信 |
| 奏絲綴苑 | 綴織の技法、制作現場、思想との接点を提供する協業先 |
| 坂元勝彦氏 | 「TSUZURE — 綴 — Bloom」の造形 |
| 甲府のジュエリー職人 | 金属加工、研磨、石留めなどジュエリー本体の制作 |
| 購入者 | 受注を生み、作品を使用し、背景を受け取る主体 |
「循環」は、ARCELFが目指す事業モデルとして理解できます。
編集長コメント
工芸との協業を見るとき、完成品の美しさとともに、着想源となった工芸や作り手の役割にも目を向けたいと考えます。工房の背景が伝わり、担い手への敬意が保たれ、作品が選ばれることが次の仕事や制作につながっていく。その関係の積み重ねに、協業の可能性があります。
ARCELFに注目するのは、工房との対話や制作背景の記録を大切にし、ジュエリーを通じて工芸の現場へ価値を還すことを目指している点です。今後のコレクションでも、作り手との関係がどのように育まれていくのかを見ていきたいと思います。
ここからはARCELF個別の課題を指摘するものではなく、工芸とブランドの協業を考える際に、工芸ジャポニカが大切にしたい一般的な視点を整理します。
- 職人や工房の役割が明示されているか
- 調査、監修、制作、技術提供に対する報酬や発注の仕組みがあるか
- ブランドの成長による負担が工房側だけに偏らない設計か
- 工芸の背景や担い手の思いを共有し、記録や発信に敬意が保たれているか
- 職人名・工房名が継続的にクレジットされるか
- 単発の話題づくりではなく、次の発注や共同開発が想定されているか
- 購入者が、誰のどのような仕事に価値を支払うのか理解できるか
売れることは、工芸を持続させるうえで重要です。しかし、販売数だけを目標にすると、制作速度や原価の圧力が作り手へ偏る可能性があります。
循環とは、単に売上が発生することではありません。仕事を続けられる条件、技術を教える時間、適切な信用、次の表現を試す余白まで含めて、関係者の間を価値が巡ることです。
ARCELFは、次のコレクションとして、寺社仏閣の修繕に携わってきた京都の漆(うるし)職人との協業を進めていると発表しています。
どこで見て、どう関わればいいのか?(購入・来訪・協業)
ARCELFの作品は公式オンラインストアで確認できます。パリでの展示に加え、国内展示も発表されていますが、会場や受付状況は最新の公式情報を確認してください。
2026年9月5日から7日まで、Bijorhca Parisの「BRILLIANT」エリアでブランドデビュー。会場はParis Expo Porte de Versaillesです。Bijorhcaは主にバイヤー、プレス、デザイナーなどの業界関係者を対象とする専門見本市のため、来場条件は主催者情報を確認してください。
(参照:Bijorhca Paris 開催情報|WSN Group)
2026年9月10日から13日には、パリのヴォージュ広場にある「ESPACE SYLVIA RIELLE」で単独ポップアップが予定されています。
会場ではジュエリーを手に取り、試着や注文ができるほか、着想源となった西陣爪掻本綴織、工房で撮影した写真や映像、現地の作業音をもとにした音響作品も紹介すると発表されています。
開催時間は、9月10日から12日が12時から20時、13日が12時から16時です。最終日の16時以降は招待制のクロージングパーティーが予定されています。変更される可能性があるため、来訪前に最新情報をご確認ください。
(参照:Place des Vosgesにて、ARCELF初のポップアップを開催|ARCELF)
国内では、2026年10月29日から31日に都内で初の展示会を開催し、11月27日から29日に「New Jewelry TOKYO 2026」へ出展するとARCELFが発表しています。
New Jewelry TOKYO 2026の開催日は主催者公式サイトでも確認できますが、ARCELFの出展情報、国内初展示会の会場、入場条件については、ブランドおよび主催者による最新発表をご確認ください。
(参照:New Jewelry TOKYO 2026|New Jewelry LLC.)
公式オンラインストアでは、コレクションの各作品、素材、寸法、納期、手入れ方法を確認できます。2026年9月5日の確認時点では、英語版コレクションページに800ドルから3,400ドルまでの商品が掲載されています。価格は作品、素材、表示通貨、配送地域などによって変わる可能性があります。
ARCELFによると、2026年9月5日より全商品が公式オンラインストアで購入可能になっています。受注状況、価格、対応サイズ、納期、返品条件は、注文時に各商品ページで確認してください。
リングは、幅によって着用感が変わります。受注生産品には完成後のサイズ直しができない作品もあるため、号数だけで決めず、内周、リング幅、指の関節部分まで確認することが大切です。
(参照:コレクション・商品情報|ARCELF)
ARCELFの最新情報は、公式サイトおよび公式Instagramで確認できます。
(参照:ARCELF Official Website|ARCELF)
(参照:@arcelf_official|Instagram)
工芸を生かした商品開発、職人・工房との協業、取材や国内外への情報発信を検討している企業・団体の方は、工芸ジャポニカの相談窓口もご利用ください。技法をイメージとして借りるのではなく、役割、報酬、権利、クレジット、継続発注を整理するところから検討します。
FAQ
- Q1. 綴織と西陣爪掻本綴織は同じものですか?
- 綴織は西陣以外にも存在する織物の形式です。本記事で扱うのは、京都・西陣で受け継がれ、指の爪で緯糸を掻き寄せる「西陣爪掻本綴織」です。
- Q2. 西陣爪掻本綴織は、一般的な西陣織と何が違うのですか?
- 経糸の下に図案を置き、必要な色の緯糸を職人が指の爪で一越ずつ掻き寄せて文様を織ります。色や曲線の表現に織り手の判断が強く反映される、高度な手織り技法です。
- Q3. ARCELFのジュエリーには、西陣織の布が使われていますか?
- 公式情報で確認できる代表的なリングは、織物そのものではなく、銀やダイヤモンドなどで制作されています。ファーストコレクションでは、糸の重なり、光、張力、表裏の構造など、工房で目にした構造や表情をジュエリーへと再構成しています。
- Q4. ARCELFは工房とどのように関わっていますか?
- ARCELFは、奏絲綴苑をファーストコレクションの協業先として紹介し、工房の調査や職人との対話を制作につなげています。技術や職人の言葉を写真・映像・音・文章で記録し、工房の記録やコレクションの背景を収めたブランドブックを購入者にも届けています。
- Q5. 「工房に還元する循環」とは何ですか?
- 作品が選ばれることで作り手の仕事と報酬を生み、それを次の制作や技術継承へつなげるという考え方です。ARCELFが目指す事業モデルです。
- Q6. ARCELFのジュエリーはどこで購入できますか?
- 公式オンラインストアで購入できます。ARCELFによると、2026年9月5日より全商品が購入可能になっています。展示会やポップアップでも注文機会が案内されています。納期や対応サイズなどは、注文時に公式情報をご確認ください。
- Q7. 価格はどのくらいですか?
- 2026年9月5日の確認時点では、英語版公式コレクションページに800ドルから3,400ドルまでの商品が掲載されています。素材、仕様、通貨、配送地域によって変わる可能性があるため、注文時に公式情報をご確認ください。
- Q8. どのような素材が使われていますか?
- 作品により異なりますが、925シルバー、ゴールドを施した仕上げ、ロジウムコーティング、合成ダイヤモンドなどが使われています。10K、18K、プラチナでの制作を相談できる作品もあります。
- Q9. すべて受注生産ですか?
- ARCELFは全品受注生産・Made in Japanと発表しています。商品ページでは、代表的なリングの制作期間を約1〜1.5か月と案内していますが、時期や作品によって変わる可能性があります。
- Q10. 自社ブランドで産地や工房と協業する際の参考になりますか?
- 工房名の明示、直接対話、制作背景の記録、受注生産という点は参考になります。一方、実際の協業では、試作費、報酬、知的財産、クレジット、量産責任、契約終了後の扱いまで事前に整理する必要があります。
まとめ
ARCELFが目指しているのは、日本の美の断片を現代のジュエリーへ再編集し、作品が選ばれることを工芸の現場の次の仕事へつなげていく関係です。
西陣爪掻本綴織の布や文様をそのまま装飾に使うのではなく、経糸の張力、巻糸の不揃いな重なり、糸が織り重なることで生まれる光、職人の手の動きなど、制作の過程で目にした構造や表情をジュエリーへと置き換えた点に、「TSUZURE – Loose End」の特徴があります。
一方、工芸ジャポニカが見届けたいのは、ブランドデビューの華やかさだけではありません。協業工房への仕事と報酬が継続するのか、工芸の背景や担い手への敬意が保たれるのか、次の担い手を受け入れる環境へつながるのか。その結果は、今後の発注と協業の積み重ねによって初めて見えてきます。
協業が誰の仕事を生み、どのような価値を次へ残すのかを見続けること。それが、工芸を一時的な消費で終わらせないための向き合い方だと考えます。
