抹茶人気が茶道具の取引拡大につながっている事例はあります。ただし、確認できる流通データだけで、日本製の茶碗・茶筅全体の需要増を判断することはできません。

「抹茶が海外で売れているなら、茶碗や茶筅(ちゃせん)にも商機があるのではないか」。仕入れや商品開発を考える際、気になる問いです。しかし、抹茶への関心が高まっていることと、自社が扱う道具が選ばれることの間には、用途、価格、販売経路、供給条件といった違いがあります。

茶の輸出統計、越境ECの取引データ、産地や工房の公式発信を照合し、どこまで需要を確かめられるのかを整理します。工芸事業者、ギャラリー、小売店、飲食店が、茶道具の仕入れや海外展開を判断するための手がかりです。

抹茶人気は茶碗・茶道具の需要につながっているのか?

特定の卸プラットフォームでは茶器の取引拡大が確認できます。一方、茶の輸出統計から、茶碗・茶筅の販売状況を直接読み取ることはできません。

農林水産省の資料によると、2025年の緑茶輸出額は約721億円でした。2026年1〜8月も約674億円と、前年同期を上回るペースで推移しています。ただし、これは緑茶全体の数字です。抹茶だけの輸出額でも、茶道具を含む市場規模でもありません。
(参照:茶をめぐる情勢・輸出関連資料|農林水産省)

茶道具については、民間事業者の取引データが具体的な手がかりになります。ラクーンホールディングスは2025年10月、越境EC「SD export」の茶器流通額が、2024年5月〜2025年4月に前年比2.2倍になったと発表しました。これは茶器の取引が拡大した一例ですが、最終消費者への販売数量や、日本製品だけの伸びを示すものではありません。
(参照:BtoB販売動向発表・抹茶と茶器の需要動向|ラクーンホールディングス/PR TIMES)

対象 確認できること その情報だけでは分からないこと
粉末状の緑茶 輸出金額・数量を統計番号で追跡できる 抹茶と粉末茶の内訳、茶道具の購入状況
抹茶茶碗 陶磁製食卓用品などの分類は確認できる その分類に含まれる抹茶茶碗だけの輸出額・数量
茶筅 産地や工房が製法・受注状況を発信している 今回確認した資料では、茶筅単独の全国的な輸出推移
卸流通の茶器 特定の越境ECで取引金額の増加が発表されている 市場全体の成長率、用途別・製造国別の詳しい内訳

この記事で使う「需要」の範囲

本稿では、茶道具の需要を、関心や問い合わせにとどまらず、購入や使用につながる動きとして捉えます。その根拠になる情報は、大きく三つに分かれます。

  • 貿易統計:国境を越えた取引を、品目・期間・相手国などで集計した情報です。
  • 卸・流通のデータ:卸サイトや商社などが、自社の取引実績から示す情報です。
  • 作り手・小売の発信:商品別の受注、販売、納期、使われ方などに関する情報です。

これらは対象範囲と測っているものが違います。公的統計は広い範囲を継続比較できますが、個々の用途までは分かりません。工房の発信は具体的である一方、一社の状況を市場全体へ広げることはできません。

さらに、受注、出荷、最終販売も区別します。海外の小売店が初回の在庫を仕入れた段階と、商品が売れて補充注文を出した段階では、継続需要を判断するうえでの意味が異なります。

抹茶の輸出は、統計でどこまで確認できるのか?

輸出統計で追跡できるのは、抹茶を含む「粉末状の緑茶」です。抹茶単独の数字ではないことを押さえ、金額・数量・平均単価を分けて読みます。

大阪税関によると、2019年1月の輸出統計品目表の改正で、緑茶の中に粉末状の区分が追加されました。これにより、緑茶全体より細かい単位で輸出動向を分析できるようになりました。ただし、新設されたのは抹茶専用の番号ではありません。
(参照:緑茶の輸出・2025年12月特集|大阪税関)

「粉末状の緑茶」には何が含まれるのか

農林水産省は、粉末状の緑茶に抹茶と粉末茶が含まれると説明しています。「粉末状の緑茶の輸出増」を、そのまま「抹茶だけの輸出増」と読み替えないことが重要です。

用語の整理:抹茶・碾茶・粉末状の緑茶

  • 碾茶(てんちゃ):覆下(おおいした)栽培した茶葉を、碾茶炉などで揉まずに乾燥させたもので、抹茶の原料です。
  • 抹茶:碾茶を茶臼(ちゃうす)などで微粉末にしたものです。
  • 粉末茶:農林水産省の資料では、茶を粉砕器などで粉末にしたものと説明されています。
  • 統計上の粉末状の緑茶:抹茶と粉末茶を含み、この区分内では両者を分けて集計していません。

資料で使われる「粉末状」という分類と、商品名としての「抹茶」は、対象範囲が異なります。
(参照:形状別のお茶の輸出実績|農林水産省)

粉末状の緑茶の統計番号は、正味重量3kg以下の直接包装にしたものが0902.10-100、それ以外が0902.20-100です。全体を見る際には、両方を対象にします。なお、包装重量の区分だけで家庭用・業務用を判別することはできません。
(参照:輸出統計品目表・第9類〈2026年1月版〉|税関)

2019年以降の輸出額と単価の推移

大阪税関の資料では、全国の粉末状緑茶の輸出額は2019年の8,893百万円から、2024年には27,197百万円へ増えています。輸出量も同期間に2,200トンから5,092トンへ増加しました。

年 輸出数量(トン) 輸出金額(百万円)
2019年 2,200 8,893
2021年 3,024 13,338
2023年 4,290 21,606
2024年 5,092 27,197
2025年 8,718 60,384

対象は日本から世界への粉末状緑茶の輸出です。2019〜2024年は大阪税関資料、2025年は農林水産省資料の掲載値を使用しています。いずれも元データは財務省貿易統計であり、独立した二つの調査結果ではありません。
(参照:緑茶の輸出・データ集|大阪税関)
(参照:形状別のお茶の輸出実績|農林水産省)

2025年の輸出額は約604億円、平均輸出単価は6,927円/kgです。ここでいう平均単価は、輸出金額を輸出数量で割った値です。同じ商品の値上がりだけでなく、価格帯の異なる商品の構成が変わることでも動きます。
(参照:形状別輸出単価〈2025年〉|農林水産省)

輸出額の伸びは、飲まれた量や、道具を購入した人数の伸びとは一致しません。 茶道具の需要を考えるには、茶を使う店舗や家庭、使用方法、買い増し・交換の状況を別に確かめる必要があります。

数字を読むときの3つの注意(FOB価格・確報値・抹茶と粉末茶の混在)

一つ目は、輸出金額と海外の店頭売上を混同しないことです。輸出統計は原則としてFOB価格、すなわち輸出港での本船渡し価格を基準とします。輸入国までの国際運賃・保険料や、現地での関税、小売段階の費用を含む店頭価格とは異なります。
(参照:貿易統計のよくある質問|財務省貿易統計)

二つ目は、統計の公表段階です。貿易統計には速報、確報、確々報、確定があり、修正に伴って数量や金額が変わる場合があります。比較には資料名と対象期間を残し、年途中の累計は前年の同じ期間と比べます。
(参照:利用上の注意|財務省貿易統計)

三つ目は、抹茶と粉末茶の混在です。図表や見出しでも「粉末状の緑茶」という対象名を保つことで、数字だけが引用された場合の誤解を減らせます。

茶碗・茶筅の輸出は、なぜ統計で見えないのか?

確認した陶磁製食卓用品などの分類では、抹茶茶碗だけを取り出せません。茶筅についても、今回の調査では単独の輸出推移を確認できていません。

これは、需要がないという意味ではありません。知りたい商品の範囲と、統計が集計している範囲が合っていないという問題です。広い分類を使う場合は、その数字が何を含むかを示す必要があります。

対象 確認した統計番号・区分 読み取る際の限界
粉末状の緑茶 0902.10-100/0902.20-100 抹茶と粉末茶が混在する
磁器製の食卓用品・台所用品 6911.10-000 抹茶茶碗以外の食器も含み、数量単位はKG
磁器以外の陶磁製家庭用品など 6912.00-000 抹茶茶碗以外の品物も含み、数量単位はKG
茶筅 本稿では単独の統計系列を未確認 推定した分類から輸出額を算出しない

個々の商品の分類は、素材や仕様などに応じて確認する必要があります。
(参照:輸出統計品目表・第9類〈2026年1月版〉|税関)
(参照:輸出統計品目表・第69類〈2026年1月版〉|税関)

陶磁器の統計分類と茶碗の位置

磁器製の食卓用品・台所用品や、磁器以外の陶磁製家庭用品などの分類には、抹茶茶碗だけを識別する細目がありません。その分類の輸出額が増えても、抹茶茶碗の寄与は分かりません。

さらに、数量が重量で示されるため、そのまま販売個数に置き換えることもできません。大きさや重さの異なる食器が混在するなかで、平均的な茶碗の重量を仮定して個数を出す方法は、誤差が大きくなります。

茶碗の商品企画では、こうした統計を食器全体の参考動向として使い、具体的な販売数量や用途は、対象商品の受注・販売記録で補うのが適切です。

茶筅はどの品目に入るのか

本稿で中心に扱うのは、竹製の茶筅です。ただし、茶筅単独の輸出額や数量を取り出せる統計番号については、今回確認した資料から確定できていません。

材料が竹であることだけを理由に分類を推測し、別の竹製品を含む数字を茶筅の輸出額として扱うことは避けます。実際の輸出に用いる分類は、商品仕様を示して税関などに確認する必要があります。

茶筅の需要を示す数字に接したら、全国の統計なのか、一社の受注なのか、産地の調査なのかを確認してください。対象が明確な個別データは有用ですが、その範囲を超えた結論には使えません。

輸出統計に乗らない購入経路

財務省貿易統計の「利用上の注意」では、20万円以下の少額貨物や、旅具通関扱いをする貨物等は計上しないと説明しています。このため、訪日客が購入して持ち帰る品物など、貿易統計に表れない取引もあります。
(参照:利用上の注意|財務省貿易統計)

ただし、茶道具の海外向け需要のうち、それらが占める割合は今回の資料からは分かりません。「かなりの部分が統計に載らない」と規模まで推測することはできません。

また、日本の卸や国内拠点を経由した商品でも、その後の輸出が計上対象であれば統計に含まれます。購入経路の名称だけで判断せず、どの段階の取引を見ているかを確かめることが必要です。

流通と作り手の発信からは、何が読み取れるのか?

卸流通では茶器の取引拡大、産地資料では材料準備に時間を要する製法が確認できます。販売の動きと供給の条件を組み合わせると、商機と制約の両方が見えてきます。

統計で商品を細かく分けられなくても、使われ方を知る手がかりはあります。ただし、事業者の発表が直接示す取引実績と、その事業者による市場の解釈は区別して読む必要があります。

卸流通データが示す「片口」への偏り

ラクーンホールディングスの2025年10月3日の発表では、「SD export」の茶器流通額は2024年5月〜2025年4月に前年比2.2倍となり、国別の茶器受注額は米国で2.48倍、オーストラリアで2.88倍になったとしています。これらは取引金額の指標であり、販売個数の倍率ではありません。
(参照:BtoB販売動向発表・抹茶と茶器の需要動向|ラクーンホールディングス/PR TIMES)

同発表は、片口抹茶椀について、点てた抹茶をミルク入りのグラスへ注ぎやすいことが人気につながっていると説明しています。器の形を、飲み物を作る動作と結び付けて紹介した点が参考になります。

ただし、ここでいう「片口への偏り」は、同社が用途と注目商品として取り上げた傾向です。片口椀の構成比や、茶器全体の増加に対する寄与は示されていません。市場全体の伸びの中心がラテ用の器だと断定することはできません。

工芸の提案に生かせるのは、倍率だけではなく、「なぜ、その形が必要になったのか」という視点です。使い手の動作が分かれば、注ぎやすさ、持ちやすさ、容量など、試すべき条件を具体化できます。

茶筅の産地・高山で起きていること

奈良県生駒市の高山は、茶筌の産地です。近畿経済産業局の「伝産男子。伝産女子。Vol.8 高山茶筌」では、冬に切った竹を干し、油を抜き、2〜3年寝かせてから加工する工程が紹介されています。
(参照:伝産男子。伝産女子。Vol.8 高山茶筌|近畿経済産業局)

この製法から分かるのは、完成品の加工時間だけでは供給条件を説明できないことです。材料の準備も含めて生産を計画する必要があります。ただし、個々の工房の材料在庫や生産余力までは、この資料から判断できません。

高山の翠華園(すいかえん)の公式サイトには、多数の注文と納品待ちを理由にウェブショップの受注を一時停止し、2025年3月の再開を案内した告知が残っています。これは受注対応の調整が必要になった過去の事例です。海外注文の比率や増加率、現在の納期を示すものではありません。
(参照:ウェブショップ一時受注停止について|翠華園)

材料準備に時間を要するという情報と、実際の受注調整の発信を合わせて読むことで、「注文が入ればすぐに増産できる」とは限らないことが分かります。発注前には、現在の供給条件を直接確認することが欠かせません。

作り手の発信をどう読むか

欠品や納期延長は、需要を考える重要な手がかりです。しかし、それだけでは注文増と供給減を切り分けられません。注文数が変わらなくても、生産や入荷が減れば品薄になるためです。

確認したいのは、次の項目です。

  • 告知が対象にしている時期と商品
  • 注文の増加と、生産・入荷の変化
  • 国内・海外、卸・小売などの販売先
  • 一時的な集中か、再注文を伴う継続的な動きか

公式サイトに掲載されていることと、現在も同じ状況であることは別です。過去の案内を、そのまま最新の販売状況として紹介しないようにします。

編集長の視点:数字のある商品だけで市場を語らない

統計で見える商品の成長は、数字を取り出しにくい道具の動きまで説明してしまいがちです。しかし、茶の輸出額と茶碗の購入は同じ現象ではありません。茶は消費され、茶碗は繰り返し使われます。茶筅にも、使用や手入れに応じた交換があります。

私は、使う人や店舗が増えたのか、買い増しや交換が生じたのかまで確かめることが必要だと考えます。納期の長さを人気の証拠として紹介するだけでなく、その注文を作り手がどのような条件で受けられるかを見る。そこまで含めて、事業に役立つ需要の分析になります。

「売れている」の中身を分けると、何が見えるのか?

用途、製造地、生産方式は別の比較軸です。茶道用・カフェ用という用途の違いだけで、作家物か量産品か、増産できるかを決めつけることはできません。

仕入れを考えるときは、まず使う場面を整理し、その後に素材、作り手、製造地、数量、価格などを確認します。次の表は売れ筋ランキングではなく、商品を検討するための確認項目です。

用途 確認したい仕様・価値 取引前の確認事項
茶の湯・稽古・茶会 使用目的や指導方針との適合、扱いやすさ、取り合わせ 必要な仕様、数量、納期、作家・作品情報
家庭・カフェでの抹茶調製 点てやすさ、注ぎやすさ、容量、洗浄・乾燥のしやすさ 使用方法との適合、補充、取扱説明
ギフト・土産 使い方の分かりやすさ、包装、持ち運び、制作背景 セット内容、破損対策、製造地の表示
鑑賞・収集 造形、素材、作家の表現、制作背景 作品情報、状態、販売条件、取り扱い方法

いずれの用途にも、さまざまな製法や価格帯の商品があり得ます。用途ごとの需要を調べる際も、商品構成の違いを残して比較することが必要です。

茶道用の需要と抹茶ラテ用の需要

茶の湯で使う道具を選ぶ際には、稽古や茶会の目的、指導者から求められる条件、ほかの道具との取り合わせを確認します。一方、ラテを調製する器では、点てた抹茶を別のグラスへ移す動作への適合が、選定理由の一つになります。

同じ「抹茶用」であっても、飲むための器と調製するための器では、必要な形や数量が変わります。カフェで抹茶メニューが増えたからといって、客数と同じ数の抹茶茶碗が必要になるとは限りません。

また、ラテ向けの関心が茶の湯や作家作品への関心につながる可能性はありますが、その移行を本稿の資料で確かめたわけではありません。用途間のつながりは期待として持ちつつ、実際の購入行動を分けて見ることが大切です。

海外製の流通拡大をどう受け止めるか

ラクーンホールディングスの発表には、欠品への対応として中国製品を扱う出展企業の事例もあります。ただし、匿名の個別事例であり、茶器市場全体の製造国別シェアを示すものではありません。
(参照:抹茶・茶器の需要増加に伴う各社の対応事例|ラクーンホールディングス/PR TIMES)

日本製と海外製を、それだけで品質の優劣に置き換えることは適切ではありません。確認するのは、材料、製法、使用への適合、製造地、取引条件です。個別商品の違いを説明してこそ、使い手が選べる情報になります。

作り手の技術や制作背景を伝える際も、他の商品を下げる必要はありません。なぜその材料を使うのか、どのような動作を考えて形を決めたのかを示す方が、選ばれる理由を具体的に伝えられます。

茶道具の仕入れや商品開発では、何を確認すべきか?

対象顧客と用途を定め、販売実績、再注文、供給条件を確認します。小規模な試験導入から始め、使われた結果を次の仕入れや制作へ返すことが重要です。

話題性は調査を始めるきっかけになりますが、発注数量を決める根拠には足りません。自店で販売する商品、店舗で使う道具、共同開発する製品を分け、何を確かめれば次の判断ができるかを整理します。

茶道具の需要を確かめる10のチェック項目

  • 「売れている」の根拠が、統計・卸・小売・SNSのどれか分かる
  • 数字の対象期間・地域・単位・商品分類を確認した
  • 茶の輸出額を茶道具の販売実績として扱っていない
  • 対象顧客と使用場面を具体化した
  • 必要な形・容量・使いやすさを確認した
  • 製造地・製造者・素材を商品情報で確認した
  • 納期、希望数量、追加発注への対応を相談した
  • 初回注文と補充・再注文を分けて記録できる
  • 海外販売では対象国・商品に応じた輸入条件を確認する
  • 試験導入後の評価項目と、次の判断時期を決めた

ギャラリー・小売が確認すること

小売店では、売上金額に加えて、販売数量、入荷量、売れた期間、購入理由を記録します。新商品を増やしたことで売上が伸びたのか、同じ商品の販売が伸びたのかも分けてください。

茶碗は繰り返し使うため、消耗品と同じ頻度の再購入を求める必要はありません。新規顧客に届いているか、別の器への買い増しがあるか、卸先から補充注文が続くかなど、商品の性質に合う指標を見ます。

作家物を扱う場合は、制作ペースと販売計画をすり合わせます。必要な在庫を持つことと、次の入荷時期を正確に伝えることの両方を考え、無理のない取引を組み立てます。

飲食店が抹茶メニュー用の器を選ぶとき

飲食店では、提供方法から器を選びます。客席で点ててその器から飲むのか、厨房で調製してグラスへ移すのか。使う場面を決めてから、形や数を検討すると整理しやすくなります。

片口椀は別の容器へ注ぐ用途で検討できますが、商品ごとに注ぎやすさや持ちやすさを試すことが必要です。洗浄、乾燥、収納、破損時の補充も含めて、日々の作業に合うかを確かめてください。

見込み(みこみ:器の内側)の形や手への収まりなど、抹茶茶碗を選ぶ基本的な視点は、次の記事でも整理しています。

試験導入では、スタッフが使いやすいと感じた理由と、扱いにくかった場面の両方を残します。その情報を作り手へ共有すれば、仕様や使い方の説明を具体的に相談できます。

海外展開・輸出を検討する事業者が確認すること

海外展開では、まず販売国と商品仕様を定めます。そのうえで、適用される品目分類、関税、食品に触れる器具としての要件、表示など、対象に応じた条件を確認します。茶の輸出条件を陶磁器や竹製品へそのまま当てはめることはできません。

取引条件では、数量、納期、追加生産、個体差の許容範囲、破損時の対応、仕様変更の扱いを整理します。希望を先に約束するのではなく、作り手が対応できる範囲を確認してから合意することが重要です。

商品開発や販路づくりを検討している方は、用途・数量・納期・対象国を整理したうえで、工芸ジャポニカの法人向け支援をご確認ください。作家・工房との協業や、商品の価値を伝える発信など、目的に応じた相談につなげられます。

よくある質問(FAQ)

統計が示す対象と、個別商品の販売状況を分けて考えることが基本です。仕入れ判断では、用途と供給条件の確認も欠かせません。

Q1. 抹茶の輸出額はどれくらい増えていますか?
抹茶単独ではなく、抹茶を含む粉末状緑茶の数字で確認します。公式資料の掲載値では、2024年の27,197百万円から2025年の60,384百万円へ増加しています。
(参照:緑茶の輸出・データ集|大阪税関)
(参照:形状別のお茶の輸出実績|農林水産省)
Q2. 抹茶の輸出統計に、茶道具は含まれていますか?
含まれていません。茶と茶道具は別の品目として扱われるため、茶の輸出額から茶碗や茶筅の販売額を読み取ることはできません。
Q3. 茶碗の輸出が増えているかどうかは、どこで確認できますか?
本稿で確認した陶磁製食卓用品などの分類からは、抹茶茶碗だけを抽出できません。対象商品の卸・小売の販売記録や、工房の受注実績で補う必要があります。
Q4. 海外で売れている茶道具は、茶道用ですか?抹茶ラテ用ですか?
越境EC事業者の発表には、ラテの調製に使いやすい片口抹茶椀への関心が示されています。ただし、用途別の市場構成比は確認できず、どちらが全体を主導しているかは判断できません。
Q5. 国産の茶筅は、なぜ品薄になりやすいのですか?
高山茶筌には材料準備に年単位の時間をかける製法があり、供給を考えるうえで重要な条件です。ただし、個々の欠品原因は注文量、材料在庫、生産・入荷状況を確認しなければ分かりません。
Q6. 海外製の茶筅や茶碗が増えているのは本当ですか?
卸事業者の発表には、中国製品を扱って欠品に対応する事例があります。ただし、個別事例から市場全体の製造国別シェアや増加率を判断することはできません。
Q7. 飲食店が抹茶メニュー用の器を選ぶとき、何を確認すべきですか?
調製用か提供用かを決め、点てやすさ・注ぎやすさ、洗浄・乾燥・収納、破損時の補充を確認します。導入前に実際の作業で試すことが有効です。

まとめ

抹茶人気が茶道具の取引拡大につながる事例は確認できます。ただし、日本製の茶碗・茶筅全体の需要がどれだけ増えたかは、今回の資料だけでは判断できません。

茶の輸出統計は、海外取引の動きを知る出発点です。そこに商品別の販売、用途、再注文、作り手の供給条件を重ねていくことで、自社に関わる需要を具体的に捉えられます。

工芸ジャポニカが重視したいのは、流行の大きさだけで発注を増やすことよりも、選ばれた理由を作り手と使い手の間に残すことです。どの動作に形が合ったのか、何が伝わらなかったのか、次の注文をどの条件で受けられるのか。その情報の往復が、一度の販売を継続する関係へ育てます。

抹茶への関心を工芸の仕事につなげるために、まずは一つの商品、一つの用途、一つの販売先から確かめる。その積み重ねが、作り手も使い手も納得できる需要を見つける道筋になります。

本稿は2026年10月27日時点で確認した公開資料に基づきます。輸出数値は公式資料の掲載値を使用し、独自の市場規模推計は行っていません。工房への直接取材や販売記録の収集は未実施です。企業発表は当該サービス・事例の範囲で参照し、過去の告知を現在の在庫・納期として扱っていません。

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日本の伝統文化の魅力を世界へ発信する専門メディア「Kogei Japonica」編集長。アート・メディア・テクノロジー領域を横断する専門家として、複数のデジタルメディアの統括や、国内外の芸術祭を支援するデジタルプロジェクトの責任者を務める。
最先端のAI・デジタル表現にも深く精通しており、「伝統工芸」と「テクノロジー」を掛け合わせることで、工芸のサステナビリティと新たな文化発信のあり方を推進。人間国宝から若手作家まで現代の工芸シーンにおける一次情報や現場でのリサーチを重んじ、独自の編集視点とメディア運営の知見を通して、日本の工芸文化の「今」を深く、分かりやすく伝えている。

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