2026年11月、伝統的工芸品の全国大会「KOUGEI EXPO in KANAGAWA」が神奈川県で初めて開催されます。一般来場者向けのメインイベントは、11月7日(土)から9日(月)までパシフィコ横浜で開催され、入場は無料です。
「名前は見かけたけれど、いつ・どこで・何が行われるのか分からない」「全国の工芸が集まるなら、何を見ればよいのか知りたい」という方もいるでしょう。自治体や産地の関係者にとっては、この全国大会を地域の工芸発信にどうつなげられるかも気になるところです。
本稿では、神奈川県、経済産業省、KOUGEI EXPO公式が公表している一次情報をもとに、記念式典とメインイベントの日程・会場の違い、大会公式が神奈川県の伝統的工芸品として紹介する3品目、県内のプレイベント、そして自治体・産地が発信の機会として考える際のポイントまで整理します。
なお、イベントの個別プログラムやワークショップなどは今後更新される可能性があります。記事内のイベント情報は2026年9月16日時点のものです。
目次
KOUGEI EXPO in KANAGAWA 2026とは?
KOUGEI EXPOは、伝統的工芸品への理解と普及を目的として全国各地で開催されている「伝統的工芸品月間国民会議全国大会」です。1984年から続く全国大会で、2026年度は第43回。神奈川県で開催されるのは今回が初めてです。
経済産業省は1984年から毎年11月を「伝統的工芸品月間」とし、その中心イベントとして開催地を変えながら全国大会を実施しています。2026年度大会は、記念式典を小田原市、一般来場者向けのメインイベントを横浜市で開催します。
(参照:令和8年度伝統的工芸品月間国民会議全国大会開催概要|KOUGEI EXPO)
主催者として、経済産業省、伝統的工芸品月間推進会議、一般財団法人伝統的工芸品産業振興協会、日本伝統工芸士会、神奈川県伝統的工芸品月間推進協議会が公式開催概要に掲載されています。
神奈川県は、全国大会について例年5万〜10万人が来場するイベントと説明しています。単なる販売催事ではなく、全国の伝統的工芸品、産地、作り手と来場者が接点を持つ大規模な機会として捉えることができます。
(参照:令和8年度「伝統的工芸品月間国民会議全国大会」の開催地が本県に決定しました|神奈川県)
伝統的工芸品月間国民会議全国大会(KOUGEI EXPO)の歴史
大会の正式名称は「伝統的工芸品月間国民会議全国大会」です。KOUGEI EXPOという名称で対外的に発信されており、2026年度で第43回を迎えます。
ここで重要なのは、KOUGEI EXPOを単なる「全国の工芸品が並ぶイベント」としてだけ見ないことです。背景には、伝統的工芸品を知ってもらい、産業として次の需要や担い手につなげていくという目的があります。
伝統的工芸品とは
「伝統的工芸品」は一般的な「伝統工芸品」と同義ではありません。「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)」に基づき、経済産業大臣が指定する工芸品を指します。
指定には、主として日常生活に使われること、製造工程の主要部分が手工業的であること、伝統的な技術・技法と原材料が用いられていること、一定地域で産地が形成されていることなどの要件があります。2025年10月の「東京手彫り印章」の新規指定により、全国の指定品目は244品目となっています。
(参照:「東京手彫り印章」を伝統的工芸品として指定しました|経済産業省)
なお、KOUGEI EXPOおよび神奈川県公式では、神奈川県の伝統的工芸品として鎌倉彫、箱根寄木細工、小田原漆器の3品目を紹介しています。
一方、2025年に経済産業大臣指定となった「東京手彫り印章」は、東京都と神奈川県を産地として指定されています。
そのため本稿では、制度上の関係を混同しないよう、「大会公式が神奈川県の伝統的工芸品として紹介する3品目」という表現で整理します。
(参照:KOUGEI EXPO in KANAGAWA|神奈川県)
(参照:「東京手彫り印章」を伝統的工芸品として指定しました|経済産業省)
会期・会場はいつ、どこ?記念式典とメインイベントの違い
KOUGEI EXPO in KANAGAWAは、11月6日の記念式典と、11月7日から9日のメインイベントで会場が異なります。一般来場者が展示、販売、制作実演などを目的に訪れる中心会場はパシフィコ横浜です。
| 項目 | 記念式典 | メインイベント |
|---|---|---|
| 日程 | 2026年11月6日(金) | 2026年11月7日(土)〜9日(月) |
| 会場 | 小田原三の丸ホール 神奈川県小田原市本町1丁目7-50 |
パシフィコ横浜 神奈川県横浜市西区みなとみらい1丁目1-1 |
| 主な内容 | 伝統的工芸品産業功労者表彰など | 展示、販売、制作実演、ワークショップなど |
| 入場 | 式典の参加条件は公式案内を確認 | 無料 |
メインイベントの開催時間は、11月7日(土)・8日(日)が10時から17時、9日(月)が10時から16時です。
(参照:KOUGEI EXPO in KANAGAWA|大会公式サイト)
記念式典(小田原三の丸ホール)
11月6日の記念式典は、小田原三の丸ホールで開催されます。公式開催概要では、伝統的工芸品産業功労者表彰などが予定されています。
小田原は、大会公式が神奈川県の伝統的工芸品として紹介する小田原漆器の産地でもあります。
式典そのものと産地振興を同一視することはできませんが、全国大会が横浜だけで完結せず、県西部の工芸産地にも会場を置いている点は、今回の神奈川開催を理解するうえで注目したい部分です。
メインイベント(パシフィコ横浜)
11月7日から9日のメインイベントは、パシフィコ横浜で開催されます。入場は無料です。
公式サイトでは、メインステージ「匠のひびきステージ」、工芸品の制作実演・ワークショップ、「KOUGEI×『刀剣乱舞ONLINE』コラボギャラリー」、「未来と世界の工芸」などが紹介されています。
(参照:KOUGEI EXPO in KANAGAWA|大会公式サイト)
初めて訪れる場合は、すべての展示を均等に見ようとするより、「作品を見る」「制作工程を見る」「体験する」「購入する」のうち、自分が重視したい目的を一つ決めておくと回りやすくなります。
とくに制作実演では、単に「手作業がすごい」と見るだけでなく、その作業が完成までのどの工程に当たるのか、使っている素材や道具は何かを見ると、完成品だけでは分からない技法の特徴が理解しやすくなります。
編集部の視点
全国の工芸が一堂に並ぶイベントでは、展示数の多さに目が向きがちです。
しかし、工芸を深く見るなら「素材」「工程」「道具」「仕上げ」のどれか一つを比較軸にしてみることをおすすめします。同じ木工や漆芸でも、産地によって素材への向き合い方や価値を生み出す工程は大きく異なります。
何が見られる?神奈川県の伝統的工芸品3品目を知る
KOUGEI EXPO公式が神奈川県の伝統的工芸品として紹介しているのは、鎌倉彫、箱根寄木細工、小田原漆器の3品目です。
同じ県内の工芸で、木を主要素材とする点にも共通性がありますが、作品の表情を生み出す工程は大きく異なります。
| 工芸 | 主な素材 | 特徴的な工程 | 会場で見るポイント |
|---|---|---|---|
| 鎌倉彫 | 木・漆 | 木地への彫刻と漆塗り | 彫りの深さ、刀痕、漆による表面表現 |
| 箱根寄木細工 | 複数の樹種 | 木材の天然色を組み合わせて模様を構成 | 色の境界、木目、幾何学文様の精度 |
| 小田原漆器 | 木・漆 | 木地づくり、挽物、摺漆など | 器の形、木目、漆を通した木地の表情 |
鎌倉彫は、木地に文様を彫刻した後に漆を塗り重ねて仕上げる工芸です。漆そのものを厚く塗り重ねてから彫る「彫漆(ちょうしつ)」とは工程が異なるため、実演を見る際には「何を彫っているのか」を確認すると違いが分かりやすくなります。
箱根寄木細工は、異なる樹種が持つ天然の色を生かし、木材を組み合わせて幾何学文様を構成する木工です。模様だけでなく、木材の色や木目そのものが表現の一部になっています。
実物を見る際は、単に「模様が細かいか」だけでなく、異なる木が接する境界や、模様がどのような単位から組み上げられているかにも注目してみてください。
小田原漆器は、木地の美しさを生かした漆器として知られています。
大会公式では、優れた挽物(ひきもの)技術で木地を作り、木目を生かすために生漆(きうるし)を繰り返し摺り込む摺漆(すりうるし)などを特色として紹介しています。
鎌倉彫では「木を彫る」、箱根寄木細工では「木を組む」、小田原漆器では「木地の形と木目を生かして漆で仕上げる」。このように整理すると、同じ県内の木工でも技術の考え方が異なることが見えてきます。
大会のキャッチコピーは「つくる人に、物語がある。つかう人に、物語が生まれる。」です。
また、ロゴマークは葛飾北斎(かつしかほくさい)の「神奈川沖浪裏(かながわおきなみうら)」からインスピレーションを受けて制作されたと神奈川県が説明しています。
(参照:KOUGEI EXPO in KANAGAWA|神奈川県)
編集部の視点
全国大会では、知名度の高い産地や華やかな作品に目が向くこともあります。だからこそ神奈川開催では、地元3工芸を単なる「開催県の紹介」に終わらせず、全国の工芸との比較の中でどう位置づけるかが重要です。
作品そのものだけでなく、作り手が自分たちの素材、技法、産地をどのような言葉で説明するのかにも注目したいと考えています。
プレイベントはある?県内各地の関連イベント
KOUGEI EXPO in KANAGAWAは、11月のメインイベントだけで完結するものではありません。2026年は県内の工芸産地で関連するプレイベントも展開されています。
鎌倉地区では、2026年6月26日から28日まで大船ルミネウィングで「鎌倉彫ふれあい展」が開催され、鎌倉彫の展示・販売、職人による制作実演、制作体験などが行われました。こちらはすでに終了しています。
(参照:KOUGEI EXPO in KANAGAWA|神奈川県)
続いて小田原・箱根地区では、2026年10月10日(土)・11日(日)の2日間、小田原三の丸ホールで「小田原・箱根『木・技・匠』の祭典」が開催されます。開催時間は両日とも10時から16時です。
主な内容は、2026「木工-1グランプリ」、木を使ったワークショップ、地元職人による木工市、からくり箱体験、小田原・箱根の木工の歴史を紹介する企画展です。「木工-1グランプリ」では「温故創新」をテーマに、受賞作品を含む全171点が展示される予定です。
(参照:小田原・箱根「木・技・匠」の祭典を開催します!|神奈川県)
このプレイベントは、11月の全国大会を待たずに小田原・箱根の木工文化をまとまって見る機会になります。箱根寄木細工や小田原漆器だけでなく、からくり箱など地域に蓄積してきた木工の広がりを見ることができる点にも意味があります。
「温故創新」から考える工芸の現在
伝統工芸について語るとき、「守る」という言葉がよく使われます。しかし、技法を継承することと、過去と同じ製品だけを作り続けることは同じではありません。素材や技術の核を理解したうえで、今の生活にどう接続するか。その試行錯誤も、産地が現在進行形で続いていることの一部です。
自治体・産地はどう関われる?協賛・出展の仕組み
KOUGEI EXPO in KANAGAWAは一般来場者向けのイベントである一方、自治体、産地団体、事業者にとっては、地域の工芸を全国に向けて伝える機会でもあります。
神奈川県は2026年7月15日から、企業・団体・個人を対象とした大会への協賛募集を開始しています。協賛の内容や申込方法は公式募集ページで確認できます。
(参照:KOUGEI EXPO in KANAGAWA 協賛募集|神奈川県)
また、メインイベント公式サイトでは出店希望者向けの申込導線も案内されています。
実際の参加条件、対象、募集状況については、それぞれ最新の公式要項を確認してください。
(参照:KOUGEI EXPO in KANAGAWA|大会公式サイト)
ただし、産地発信は「イベントに出展すれば終わり」ではありません。
来場者が作品を見たあと、作り手や工房を調べられるか。産地に行ってみたいと思ったときに情報へたどり着けるか。海外のバイヤーやデザイナーが検索した際に英語情報へアクセスできるか。大会後も残る情報設計まで含めて考えることが重要です。
とくに全国規模のイベントでは、会場での展示と検索上の情報を切り離さない方が効果的です。「産地名」「技法」「作家・工房」「素材」「購入・相談先」を整理した記事や英語ページがあれば、大会を一過性のPRで終わらせず、その後の問い合わせや産地への関心につなげやすくなります。
工芸ジャポニカから自治体・産地の方へ
工芸ジャポニカでは、自治体、産地組合、工芸事業者を対象に、取材記事、産地特集、国内外向けコンテンツ、英語記事などの発信についてご相談を受け付けています。全国大会や展示会に合わせた単発の告知だけでなく、検索やAI検索から継続的に発見される情報設計まで含めて検討することができます。
KOUGEI EXPO in KANAGAWAに関するよくある質問(FAQ)
KOUGEI EXPO in KANAGAWAへの来場前に確認しておきたい情報を、2026年9月16日時点の公式情報から整理します。
- Q1. KOUGEI EXPO in KANAGAWAはいつ開催されますか?
- 記念式典は2026年11月6日(金)、一般来場者向けのメインイベントは11月7日(土)から9日(月)までです。
- Q2. 会場はどこですか?記念式典とメインイベントで違いますか?
- 異なります。記念式典は小田原三の丸ホール、メインイベントはパシフィコ横浜で開催されます。
- Q3. 入場は無料ですか?事前予約は必要ですか?
- パシフィコ横浜のメインイベントは入場無料です。ワークショップなど個別企画については予約や参加条件が設定される可能性があるため、参加したいプログラムの最新案内を公式サイトで確認してください。
(参照:KOUGEI EXPO in KANAGAWA|大会公式サイト) - Q4. 神奈川県の伝統的工芸品には何がありますか?
- KOUGEI EXPOおよび神奈川県公式では、鎌倉彫、箱根寄木細工、小田原漆器の3品目を神奈川県の伝統的工芸品として紹介しています。なお、2025年に指定された「東京手彫り印章」は東京都と神奈川県を産地としています。
- Q5. プレイベントはいつ・どこで開催されますか?
- 鎌倉地区の「鎌倉彫ふれあい展」は2026年6月に開催済みです。小田原・箱根地区では、10月10日(土)・11日(日)に小田原三の丸ホールで「小田原・箱根『木・技・匠』の祭典」が開催されます。
(参照:小田原・箱根「木・技・匠」の祭典を開催します!|神奈川県) - Q6. 展示だけでなく工芸品を購入できますか?
- はい。公式開催概要では、メインイベントの内容として展示・販売・実演等が明記されています。個別の出店者、商品、在庫、価格については各出店者や大会公式の最新案内を確認してください。
- Q7. 自治体や産地、事業者はどのように参加できますか?
- 企業・団体・個人向けの協賛募集が行われているほか、大会公式サイトには出店希望者向けの案内があります。参加条件や募集状況は最新の募集要項を確認してください。
来場前チェックリスト
- 記念式典とメインイベントの会場を混同していないか
- パシフィコ横浜までのアクセスを確認したか
- 参加したいワークショップや実演の時間・予約条件を確認したか
- 「見る・制作工程を見る・体験する・買う」のどれを優先するか決めたか
- 鎌倉彫・箱根寄木細工・小田原漆器の特徴を簡単に予習したか
- 気になる作品があったとき、作家・工房・産地名を記録できるようにしたか
KOUGEI EXPO in KANAGAWA 2026は、神奈川県では初めて開催される第43回伝統的工芸品月間国民会議全国大会です。
開催日時や出店情報を知ることはもちろん重要ですが、工芸ジャポニカがより注目したいのは、一つの会場で全国の工芸を比較できるからこそ、それぞれの素材や工程、産地の違いを見つけられることです。
鎌倉彫では木を彫ってから漆を重ね、箱根寄木細工では異なる木そのものの色を組み合わせ、小田原漆器では木地と木目を生かしながら漆で仕上げる。同じ神奈川の木工でも、素材に対する考え方は異なります。
会場で気になる作品に出会ったら、「これはどこで、誰が、何を使って、どのようにつくっているのか」と一歩先まで調べてみてください。
イベントで作品と出会い、技法を知り、最後に産地へ視線を戻す。
その流れが生まれれば、KOUGEI EXPOは単なる展示・販売イベントではなく、日本各地で現在も続いている「ものをつくる場所」と出会う入口になります。
