手捻り(てびねり)は、轆轤(ろくろ)を用いず、土を手で直接成形して器や造形を立ち上げる、陶芸における最も原初的な技法です。紐作り、玉作り、板作りなど複数の方法を含み、粘土の厚みや力のかかり方がそのまま形態に反映されるため、作り手の身体感覚が作品表情として残りやすい点が特徴です。

均質さを追求する轆轤成形とは異なり、歪みや揺らぎを積極的に美として取り込みやすく、現代陶芸では彫刻的・構造的表現の基盤としても再解釈されています。本記事では、手捻りの基本構造、代表的な技法、造形美の捉え方までを詳しく解説します。

目次

手捻りとは?土と直接向き合う最も原初的な成形技法


手捻り(てびねり)は、轆轤を用いず、土を手で捏ね、積み、押し広げながら形をつくる、陶芸における最も原初的な成形技法です。機械的な回転に依らないため、作り手の身体感覚や思考がそのまま造形に反映されやすく、土との直接的な対話が生まれます。

ここでは、手捻りの定義を整理し、陶芸史の中での位置づけと起源、そして現代陶芸においても手捻りが選ばれ続ける理由を読み解きます。

手捻りの定義:轆轤を使わず手の力だけで形をつくる方法

手捻りとは、粘土を指や掌で捏ね、押し、伸ばし、積み上げることで器や造形を成形する方法の総称です。代表的な技法には、玉作り、紐作り、板作りなどが含まれますが、いずれも回転運動に頼らず、手の動きによって形を導く点に共通性があります。

轆轤成形のような均一性や左右対称性は得にくい一方で、厚みの変化や歪み、量感の揺らぎといった表情が自然に生まれます。
これらは欠点ではなく、手捻りならではの魅力として評価されてきました。土の抵抗や湿度を直接感じ取りながら進めるため、作り手には高い集中力と経験が求められますが、その分、造形は個別性と強い存在感を帯びることになります。

陶芸史における手捻りの位置づけと起源

手捻り(手びねり/手づくね)は、陶芸史の最も古い成形法の一つに位置づけられる技法です。陶器が作られ始めた初期段階では、轆轤(ろくろ)成形はまだ一般化しておらず、粘土を手で成形する「手づくり(ピンチ、紐作り=コイル成形など)」が主要な方法でした。
紐作りによる壺や鉢は、古代から多くの地域で用いられてきた手法として知られ、生活容器だけでなく、地域によっては儀礼的な用途の器物にも用いられてきました。

その後、轆轤は古代メソポタミアを中心に紀元前5千年紀末〜4千年紀ごろに発達し、均質で回転対称の器を効率よく作る手段として広がったと考えられています。
量産性や均質性が求められる器では回転成形が優位になりましたが、手捻りは消えることなく、形の自由度が必要な造形や装飾、非対称のフォルムなど、表現や目的に応じて選ばれ続けてきました。

現代陶芸においても手捻りが選ばれ続ける理由

現代陶芸において手捻りが選ばれ続ける理由は、効率や再現性とは異なる価値を生み出せる点にあります。
手捻りは、形を「作る」というよりも「立ち上げる」行為に近く、制作過程そのものが作品性を帯びます。歪みや厚みの不均一さは、作家の身体性や時間の痕跡として読み取られ、彫刻的な表現とも親和性が高いです。

また、轆轤では難しい自由なフォルムや大ぶりな造形にも対応しやすく、現代美術の文脈で評価される作品にも多用されています。
手捻りは、原始的でありながら、同時に極めて現代的な技法です。土と直接向き合うことでしか得られない表現がある限り、手捻りは今後も陶芸の根幹的技法として生き続けるでしょう。

手捻りの代表的な成形技法

手捻りには、いくつかの基本的な成形技法があり、用途や表現意図に応じて使い分けられてきました。
いずれも轆轤の回転に頼らず、土の塊や面をどのように操作するかという点に技法の本質があります。

ここでは、最も基礎的な玉作り、構造性に優れた紐作り、造形の自由度が高い板作りの三つを取り上げ、それぞれの特徴と応用可能性を整理します。

玉作り:最も基本となる成形法とその応用


玉作りは、土の塊を一つ用意し、親指などで中心を押し広げながら内側をくり抜いて形をつくる、最も基本的な手捻り技法です。
碗や小鉢など、比較的コンパクトな器に適しており、土の量感を保ったまま成形できる点が特徴です。厚みを均一に保つには経験が必要ですが、その分、素朴で安定感のある器形が生まれます。

応用としては、複数の玉を接合して形を拡張したり、意図的に厚みの差を残して造形的な表情を強調したりする方法もあります。
玉作りは単純な技法に見えますが、指の圧や回転のリズムによって仕上がりが大きく変わるため、作り手の感覚が最も率直に現れる成形法といえるでしょう。

紐作り:積層によって形を立ち上げる構造的技法

紐作り(コイル成形)は、粘土を紐状に伸ばし、それを輪積みして重ねながら器の壁を立ち上げていく成形技法です。
轆轤を用いない手びねりの代表的手法として、古くから世界各地で用いられてきました。高さや容量のある壺や鉢など、比較的大きな形にも対応しやすい点が特徴です。

工程では、積んだ紐同士をしっかり圧着して継ぎ目を一体化させ、内外から押さえたりならしたりして強度を確保します。接合が甘いと乾燥や焼成で割れにつながりやすいため、丁寧さと根気が求められるでしょう。

また、積層の痕跡をあえて残してリズム感や質感を強調することもできますし、完全にならして滑らかな面に整えれば、轆轤成形に近い外観に仕上げることも可能です。
紐作りは、構造(支え方・厚み)と表現(痕跡・面の仕上げ)を同時に設計できるため、造形意図に応じた柔軟な展開ができる点が大きな魅力です。

板作り:平面から立体へ展開する造形アプローチ

板作りは、土を板状に延ばし、その平面を切り出し、組み立てることで立体を構成する成形技法です。
箱形や角張ったフォルム、幾何学的な造形に適しており、建築的な発想と親和性が高い点が特徴です。板の厚みや接合部の処理によって、シャープにも有機的にも表現を振ることができます。

乾燥収縮を見越した精密な設計が求められるため、計画性が重要になりますが、その分、意図した形を明確に実現しやすい技法でもあります。
板作りは、器に限らず、彫刻やインスタレーション的作品にも応用されており、手捻りの中でも現代的表現に適したアプローチといえるでしょう。

手捻りならではの造形的特徴

手捻り作品の魅力は、完成度の高さや均一性では測れない造形的な豊かさにあります。
左右非対称や厚みの揺らぎといった要素は、未熟さの表れではなく、土と人の関係性がそのまま形になった結果です。

ここでは、手捻りに固有の表情やフォルムがどのように生まれるのかを整理し、轆轤成形との違いから見える造形思想の差異を明らかにします。

左右非対称に宿る表情と人の手の痕跡

手捻り作品に見られる左右非対称性は、偶然ではなく、人の手が介在した証として重要な意味を持ちます。
指の位置や圧のかかり方、成形中の姿勢や視点の変化によって、形はわずかに傾き、線は均等から外れます。こうした差異は、機械的な回転運動では生まれにくく、手捻りだからこそ自然に現れるものです。

表面に残る指跡や押さえの痕跡も、装飾ではなく制作の記録として機能します。
見る側は、完成形だけでなく、そこに至る身体的プロセスを読み取ることができ、作品との距離が縮まります。左右非対称は不安定さではなく、視線を留めるための緊張感を生み、造形に固有の表情を与えているのです。

厚み・歪み・揺らぎが生む有機的フォルム

手捻りでは、器の厚みを完全に均一に保つことは難しく、自然と差が生まれます。
この厚みの違いは、焼成後の収縮や釉の溜まり方にも影響し、結果として有機的なフォルムを形成します。歪みや揺らぎは、形を崩す要素ではなく、量感や重心を感じさせる要因として働きます。

特に、縁や胴部の微細な波打ちは、光の当たり方によって陰影を生み、静的な形に動きを与えます。
手捻りの造形は、計測可能な寸法よりも、視覚的・触覚的な心地よさを優先するため、見るだけでなく触れることで完成する側面を持っています。こうした有機的フォルムは、工業製品にはない温度感を伴い、使い手の感覚に直接訴えかけます。

轆轤成形との違いに見る造形思想

轆轤成形が回転軸を基準とした均整と再現性を重視するのに対し、手捻りは軸を固定せず、形の成立過程そのものを造形に取り込みます。轆轤では、完成形をあらかじめ想定し、そこへ向かって精度を高めていく思考が基本となります。

一方、手捻りでは、途中段階の判断や土の状態によって形が更新され、制作は対話的に進行します。
この違いは、単なる技法差ではなく、造形思想の差異を示しています。手捻りは、結果よりも過程を重視し、完全性よりも存在感を選び取る方法です。だからこそ、手捻り作品は一つとして同じものがなく、作り手の思考と身体性が強く刻まれた造形として成立するのです。

制作工程と技術的ポイント

手捻り成形は、感覚的で自由な技法に見られがちですが、実際には素材理解と工程管理が完成度を大きく左右します。とくに土選びや水分量の調整、成形中の判断、乾燥から焼成までのつなげ方は、作品の成否を決定づける重要な要素です。

ここでは、手捻り制作における基礎的かつ実践的な技術ポイントを三つの工程に分けて整理します。

土選びと水分管理:可塑性を引き出す準備工程

手捻りでは、土の種類(粒子の細かさ・粘り)と水分量の管理が仕上がりを大きく左右します。
土が硬すぎたり可塑性が不足した状態だと、押し広げる工程で割れやすくなりますし、逆に柔らかすぎると自立しにくく形崩れや歪みの原因になります。用途や表現に合わせて、扱いやすい硬さ(目安として“耳たぶくらい”と説明されることもあります)に整える意識が重要です。

練土の段階では、土の中の空気を抜くだけでなく、全体の硬さ(水分の状態)を均一にすることが大切です(荒練りで混ぜて硬さをそろえ、菊練りで空気を抜く、という整理が一般的です)。空気が残ると焼成時の不具合につながり得るため、成形前の土づくりを丁寧に行います。

また、ひび割れは水分の過不足だけでなく、厚みの不均一や乾燥ムラ、接着不良などでも起こりやすいとされます。手捻りは指先の圧が直接形に反映されるぶん、土の状態が安定しているほど無理な力をかけずに形を導きやすくなります。準備工程の丁寧さが、その後の成形の安定性に直結するといえるでしょう。

成形中の割れ・歪みを防ぐための注意点

成形中に起こりやすいトラブルとして、割れや歪みが挙げられます。割れの多くは、部分的な乾燥や厚みの急激な変化によって生じます。そのため、作業中は常に全体の水分バランスを意識し、必要に応じて濡れ布や霧吹きで調整することが重要です。また、無理に形を進めず、工程を分けて休ませる判断も欠かせません。

歪みについては、成形時の姿勢や力のかけ方が大きく影響します。片側だけを集中的に触りすぎると、重心が崩れ、乾燥時に傾きが強調されます。手捻りでは「一方向から見て整っている」だけでなく、全周を回しながら確認する視点が必要です。割れや歪みを完全に排除するのではなく、どこまでを許容し、どこからを修正すべきかを見極める感覚が、技術として求められます。

乾燥・削り・焼成へのつなげ方

成形後の工程は、手捻り作品の完成度を安定させるための重要な段階です。乾燥は急激に進めず、風通しを調整しながら全体を均一に乾かすことが基本となります。特に厚みの差がある作品では、ビニールで覆うなどして乾燥速度を揃える工夫が必要です。削り工程では、轆轤作品ほど大きな削りは行われませんが、高台の安定や重量バランスを整える目的で重要な役割を果たします。

焼成に向けては、完全乾燥を確認したうえで素焼きを行い、素地の状態を安定させます。手捻り作品は内部応力が残りやすいため、焼成スケジュールも無理のない温度上昇が望まれます。成形から焼成までを一連の流れとして捉え、各工程を丁寧につなげることが、手捻り作品を完成へ導く確かな道筋となるでしょう。

作家性が最も表れやすい技法としての手捻り

手捻りは、成形工程のあらゆる段階に作り手の判断と身体感覚が介在するため、陶芸技法の中でも特に作家性が表れやすい方法です。均質性や再現性を前提としない手捻りでは、形の完成度よりも、どのような思考と感覚で土と向き合ったかが造形に刻まれます。

ここでは、一点性の価値、装飾や加飾との関係性、そして抽象造形への展開という三つの観点から、手捻りが持つ表現的ポテンシャルを整理します。

同じ形が二度と生まれない一点性の価値

手捻りの最大の特徴は、同じ形を意図的に再現することが極めて難しい点にあります。指の動き、力の入り方、土の湿度、成形時の判断など、わずかな条件差が造形に影響するため、完成した作品は必然的に一点ものとなります。この一点性は、量産やシリーズ化とは異なる価値を生み出し、作家の時間や身体性を内包した存在として評価されます。

特に現代陶芸においては、作品の背後にある制作行為や思考過程が重視されるため、再現不可能性そのものが作品性の一部として機能します。手捻りは、結果としての形だけでなく、「その形に至った理由」をも含めて鑑賞される技法といえるでしょう。

装飾・削り・加飾との相性

手捻りは、成形段階で生まれた揺らぎや厚みの差が、装飾や加飾と自然に呼応する点でも優れた技法です。彫りや削りによる表情付けは、均一な器形よりも、凹凸や歪みのある面でこそ効果を発揮します。また、化粧土や釉薬の掛け分け、象嵌、掻き落としといった装飾技法も、手捻りの不均質な面に施されることで、偶然性と必然性が交錯する景色を生み出します。

加飾は後付けの装飾ではなく、成形で生まれた形を読み取りながら重ねられるため、全体として統一感のある表現に収束します。手捻りは、装飾を主役にする技法ではなく、装飾を造形の一部として内包できる点に強みがあります。

抽象造形・オブジェ表現への展開

手捻りは、器という機能的枠組みを離れ、抽象造形やオブジェ表現へと展開しやすい技法でもあります。回転対称に縛られないため、量感の偏りや不規則な構成を積極的に取り込むことができ、彫刻的な思考と親和性が高いです。

現代陶芸では、内外の区別が曖昧な造形や、用途を持たない形態が評価される場面も多く、手捻りはそうした表現を支える基盤となっています。土を積み、削り、崩しながら形を探るプロセスは、即興性と構築性を併せ持ち、作家の思考が直接可視化されます。手捻りは、原初的な技法であると同時に、最も自由度の高い現代的表現手段として、今なお多くの作家に選ばれ続けているのです。

鑑賞・コレクションの視点

手捻り作品を鑑賞・収集する際には、完成度を数値化できる基準よりも、造形が内包する身体性や思考の痕跡を読み取る視点が重要になります。均質さや整いすぎた形では捉えきれない価値が、手捻りには宿っています。

ここでは、作品を見る際の具体的な着眼点、「未完成性」を含めた評価の考え方、そして実用器と鑑賞陶の違いをどのように読み解くかについて整理します。

手捻り作品を見るポイント:厚み・重心・触感

手捻り作品を評価する際、まず注目したいのが厚みの分布と重心の置き方です。
均一であることよりも、どこに量感を持たせ、どこを軽くしているかを見ることで、作り手の造形意図が浮かび上がります。底部が安定しているか、視覚的な重心と実際に持ったときの感覚が一致しているかも重要な判断材料です。

また、触感は手捻り作品において欠かせない要素です。表面の凹凸や指跡、削りの跡は、視覚だけでなく触覚によって完成します。
滑らかさを目指したのか、あえて粗さを残したのか、その選択が一貫しているかどうかが、作品の完成度を左右します。見る・持つ・触れるという複数の感覚を通して評価する姿勢が求められます。

完成度と「未完成性」をどう評価するか

手捻り作品では、「未完成に見える」要素が意図的に残されることがあります。歪みや不均一な厚み、荒い表面処理などは、技術不足ではなく、造形上の選択である場合も少なくありません。そのため、完成度を判断する際には、整っているかどうかではなく、その未完成性が作品全体の表現に寄与しているかを見極める必要があります。

形の不安定さが緊張感を生んでいるのか、それとも単なる処理不足なのか、その境界を読むことが鑑賞の核心となります。
意図と結果が一致している作品ほど、未完成性はむしろ説得力を持ち、作家の思想を強く感じさせます。手捻りの評価は、「どこまで仕上げたか」ではなく、「なぜそこに留めたか」を問う行為といえるでしょう。

実用器と鑑賞陶(鑑賞陶器)の違いを読む

手捻り作品には、日常で使われる実用器と、用途を前提としない鑑賞陶の両方が存在します。
実用器では、口当たりや持ちやすさ、安定性といった機能的要素が造形の中にどう組み込まれているかが重要です。
一方、鑑賞陶では、使いやすさよりも形の緊張感や量感の配置、空間との関係性が重視されます。両者の違いは用途だけでなく、造形の判断基準そのものにあります。

コレクションにおいては、その作品がどちらの領域を志向しているのかを読み取り、その意図に沿って評価することが大切です。手捻りは、実用と鑑賞の境界を行き来できる技法であり、その揺らぎこそが作品の奥行きを生み出しています。

現代陶芸における手捻りの現在地


手捻りは、原初的な成形技法でありながら、現代陶芸において新たな意味を獲得し続けています。轆轤中心の制作体系や工業的な均質性とは異なる価値観を提示できる点が、現代の表現環境と強く結びついているためです。

ここでは、現代作家による再解釈、海外陶芸やコンテンポラリーアートとの関係、そして教育現場で重視される理由という三つの視点から、手捻りの現在地を整理します。

現代作家による再解釈と前衛的表現

現代陶芸において手捻りは、単なる伝統技法ではなく、表現手段として再定義されています。多くの作家は、器という機能的枠組みを一度解体し、量感や歪み、重力感覚そのものを主題として扱います。手捻りによる成形は、制作中の判断や身体的な動きをそのまま造形に残すため、思考と行為が不可分な表現が可能です。

その結果、作品は完成形というよりも、プロセスを内包した存在として成立します。
前衛的な作品では、積層や崩しを繰り返すことで、安定と不安定の境界を探る造形も多く見られます。手捻りは、形式を守る技法ではなく、形式を問い直すための方法として、現代作家に選ばれているといえるでしょう。

海外陶芸・コンテンポラリーアートとの接点

手捻り(手びねり/ハンドビルディング)は、海外のコンテンポラリー・セラミックスや現代美術の文脈とも接点を持っています。
とくに近年は、陶が「器」の枠を越えて、彫刻的な立体やインスタレーションとして提示される例が増え、回転対称に依存しない造形が可能な手捻りが制作手段として選ばれることがあります。

また、土という素材の物質感や、成形・乾燥といったプロセスが作品の意味や見え方に関与する点は、素材性や過程を重視する現代美術の考え方と接続しやすい、と整理できます。

手捻りによる造形は、技法の珍しさそのものよりも、素材との関係や造形の意図(空間との関係、身体的スケール、表面の痕跡など)を通じて評価されやすく、日本の手捻り作品もそうした観点から国際的な展示文脈に接続されています。

教育・ワークショップで重視される理由

手捻りは、教育やワークショップの現場においても重視され続けています。
その理由は、技術習得以前に、素材との関係性を体験的に理解できる点にあります。轆轤の操作には一定の訓練が必要ですが、手捻りは比較的早い段階から土の性質や成形の原理に触れることができます。

失敗や歪みも学習の一部として受け入れやすく、結果より過程を評価する教育方針とも相性が良いです。
また、完成形が一つに定まらないため、参加者それぞれの解釈や個性が自然に表れます。手捻りは、技法教育にとどまらず、造形思考や自己表現を育てる手段として、現代においても重要な役割を果たしているといえるでしょう。

まとめ

手捻りは、轆轤を用いずに土と直接向き合うことで形を立ち上げる、陶芸における最も原初的でありながら現代的な成形技法です。
玉作り・紐作り・板作りといった基本技法を基盤に、左右非対称や厚みの揺らぎといった要素を積極的に取り込み、作り手の身体性や思考を造形に刻み込みます。
その一点性と再現不可能性は、作家性を強く可視化し、現代陶芸やコンテンポラリーアートの文脈とも深く接続しています。

実用器から鑑賞陶、教育現場に至るまで、手捻りは結果よりも過程を重視する姿勢を体現する技法として重要な役割を担っています。
完成度と未完成性の間に立ち続けながら、土との対話を造形へと昇華させる手捻りは、今後も陶芸表現の根幹として、多様なかたちで展開されていくでしょう。

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日本の伝統工芸の魅力を世界に発信する専門家集団です。人間国宝や著名作家の作品、伝統技術の継承、最新の工芸トレンドまで、幅広い視点で日本の工芸文化を探求しています。「Kogei Japonica 工芸ジャポニカ」を通じて、伝統と革新が融合する新しい工芸の世界をご紹介し、日本の伝統文化の未来を世界とつなぐ架け橋として活動を行っています。

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