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Home»伝統工芸品»浄法寺の漆とは?「漆掻き(うるしかき)」と「器づくり」との関係性から歴史、鑑賞ポイントまで詳しく紹介

浄法寺の漆とは?「漆掻き(うるしかき)」と「器づくり」との関係性から歴史、鑑賞ポイントまで詳しく紹介

2025年9月30日1 Min Read 伝統工芸品 伝統技術 3 Views
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引用元:©1975 浄法寺漆生産組合

岩手県二戸市浄法寺地区で受け継がれてきた「浄法寺漆(じょうぼうじうるし) 」は、日本国内で流通する漆の中でも希少性が高く、品質の高さで知られています。
漆掻き(うるしかき)と呼ばれる採取の技術と、漆器づくりの工程が密接に結びついており、伝統的な器の美しさを支えてきました。

しかし、漆の背景や歴史、鑑賞の際に注目すべきポイントを十分に理解しないままでは、その価値を見逃してしまうかもしれません。
この記事では、浄法寺の漆の成り立ちから文化的意義まで詳しく紹介します。

目次

  • 浄法寺漆(じょうぼうじうるし)とは?
    • 岩手・二戸の漆掻きと器づくりの関係
    • 手に吸い付くしっとり艶の正体
    • 証紙・銘・作家名で確かめる真正性
  • 浄法寺漆(じょうぼうじうるし)の歴史
    • 起源と古代〜中世の漆利用
    • 江戸時代と南部藩の保護
    • 近代〜現代の継承と再評価
  • 浄法寺漆(じょうぼうじうるし)の制作工程
    • 漆掻き:樹液を採る伝統技法
    • 精製:透明度と粘度を調整する工程
    • 塗りと仕上げ:幾度もの塗り重ね
  • 浄法寺漆(じょうぼうじうるし)の鑑賞ポイント
    • 光沢と“層”を見る:艶・透け・深み
    • 手触り・質感・経年変化の味わい
    • 証紙・銘・作家名から読み解く真正性
  • 浄法寺漆(じょうぼうじうるし)の保管・メンテナンス・修理
    • 日常管理の基本(洗浄・乾燥・扱い方)
    • 保管環境と展示の工夫
    • 修理と再生の可能性
  • まとめ

浄法寺漆(じょうぼうじうるし)とは?


浄法寺漆(じょうぼうじうるし)は、岩手県二戸市浄法寺地区を中心に産出される国産漆の代表格であり、日本の漆文化を支えてきた存在です。
国内で流通する漆の多くは中国産ですが、浄法寺は古来より質の高い漆を産出し、平安期から寺社仏閣の造営や修復に用いられてきました。

特に国宝・重要文化財の補修には欠かせない素材として評価が高く、現在も宮内庁や文化財修復機関で重用されています。
漆掻き職人による丁寧な採取と、地元の漆器づくりが連動して産地を形成しているのが大きな特徴です。

浄法寺漆(じょうぼうじうるし)は、光沢がありながらも落ち着いた風合いを備え、使い込むほどに手に馴染む質感を持ち、実用品と文化財用の両面で高い信頼を得ています。

岩手・二戸の漆掻きと器づくりの関係

浄法寺漆の最大の特徴は「漆掻き」と「器づくり」が産地の中で密接に結びついている点です。
二戸市周辺では、漆掻き職人が6月から10月下旬まで約5ヶ月間にわたって漆の木から樹液を採取します。

この作業は木を傷つけすぎないよう慎重に行われ、1本の木から採れる漆はわずか約200g(牛乳瓶1本分)程度と極めて希少です。
その漆は地元の塗師によって精製され、椀や盆など日常器に仕立てられます。産地内で採取から製品化までが完結するため、「地漆」と呼ばれる純度の高い漆が確保できるのです。

浄法寺塗の器は堅牢でありながら温もりがあり、長年使うことで艶が深まり、修理を繰り返しながら受け継がれます。
漆掻きと器づくりが一体化しているからこそ、地域全体が伝統を守り育てる独自の循環が生まれているのです。

手に吸い付くしっとり艶の正体

浄法寺漆の器を手に取ると感じられる「しっとりとした吸い付くような質感」は、漆そのものの性質と職人の技の結晶です。
漆は塗布後に酸素と湿度を利用して硬化し、表面に独特の艶を生み出します。

浄法寺漆は透明度が高く、重ね塗りを施すことで深みのある光沢を帯びます。
この艶は単なる光沢ではなく、手肌に柔らかくなじむ質感を伴っているのが特徴です。
さらに、日常的に使用することで艶が増し、経年変化によって落ち着きのある美しさが生まれます。

表面が傷んでも塗り直しや研ぎ直しが可能で、何十年も使い続けられるのも魅力です。
使い込むほどに器と使用者が馴染み、愛着が増していく点こそが、浄法寺漆の大きな価値といえるでしょう。

証紙・銘・作家名で確かめる真正性

浄法寺漆認証
引用元:岩手県二戸市浄法寺総合支所 漆の郷づくり推進課
浄法寺漆の器を選ぶ際には、真正性を確認することが重要です。
その目安となるのが、「浄法寺漆認証制度」による認証ラベル、「伝統的工芸品」の証紙、器の底部などに刻まれた「銘」、さらに「作家名」です。

浄法寺漆認証制度は、二戸市と岩手県が共同で創設した国内唯一の漆の認証制度で、第三者機関による品質審査を経て認証された漆液には専用のブランドマークが付けられます。
また、浄法寺塗は国の伝統的工芸品に指定されており、5つの要件を満たした製品には伝統的工芸品産業振興協会発行の「伝統証紙」が貼付されます。

さらに、浄法寺漆は2018年に地理的表示(GI)保護制度に登録され、輸入漆や国内他産地の漆との差別化が法的に保護されています。
職人の銘やサインは、その作家の作風や制作背景を知るための重要な情報であり、付属の説明書や証明書を確認することで、購入後の修理や相談もスムーズに行えます。

国内で流通している漆の97%以上が中国産などの輸入品という現状において、真正性を確かめることは浄法寺漆器のコレクション価値や長期的な使用価値を守るうえで欠かせません。

浄法寺漆(じょうぼうじうるし)の歴史


浄法寺の漆は、平安期から日本の漆文化を支えてきた存在であり、千年以上の歴史を誇ります。
奈良・平安時代には寺院や仏具に用いられ、東北の豊かな漆林が国の重要資材として注目されました。

近代以降は国産漆の需要減少や安価な輸入漆の台頭によって厳しい状況に置かれましたが、文化財修復や伝統工芸の現場では欠かせない存在として存続し、現代では「地漆」の復権を目指す活動が進められています。

起源と古代〜中世の漆利用

浄法寺塗の直接的な起源は、奈良時代の神亀5年(728年)に行基が聖武天皇の勅命を受けて開山した天台寺にあります。
寺の僧侶たちが日々の食事に使うため自ら作った什器が浄法寺塗の始まりとされ、装飾のほとんどない素朴で実用的な「御山御器」として地元に広まりました。

江戸時代初期には、盛岡藩主南部重直の黒印文書に「箔椀」の記載があり、この地域の漆掻きや漆塗りは17世紀半ばには組織的な産業として確立されていたことが確認できます。
藩政時代には、漆は盛岡藩の貴重な産物となり、藩全体の約47%が浄法寺を含む二戸地域からの産出であったと記録されています。

中世に入ると、南部氏による天台寺の保護もあり、戦乱や宗教勢力の影響で寺社仏閣の造営・修復が増え、漆の需要は一層拡大します。
この豊かな漆林に恵まれた地域特性が、漆掻きを生活の糧とする産業基盤の確立を支えました。

江戸時代と南部藩の保護

江戸時代に入ると、浄法寺漆は南部藩の重要な財源として厚い保護を受けるようになります。
藩は「漆掻奉行」を設置して漆林を管理し、漆の他領への持ち出しを禁じる統制を敷きました。
また、木を殺さずに長年にわたって樹液を採取する「南部の養生掻き」という独特の技法を確立し、持続可能な漆生産を実現していました。

この体制により、浄法寺は全国有数の漆産地としての地位を確立し、藩全体の約47%が浄法寺を含む二戸地域からの産出という記録が残されています。
漆の生産は樹液だけでなく、漆の実から作られる漆蝋も含み、これらが藩の財政を支える重要な産物となりました。

当時の漆は寺社仏閣の修復だけでなく、武具や調度品、茶道具にも用いられました。
特に茶の湯文化の広がりとともに、上質な漆の需要は増加し、浄法寺漆は「堅牢で美しい仕上がりを生む漆」として重宝されます。
藩主への献上品として金箔を施した優美な「箔椀」も制作され、その技術の高さを物語っています。

近代〜現代の継承と再評価

明治以降、近代化の流れの中で国産漆は一時的に需要を減らします。特に昭和期以降は安価な中国産漆が大量に輸入され、浄法寺漆の生産は危機的状況に追い込まれました。
しかし、文化財修復や伝統工芸の分野では国産漆の品質が欠かせないため、浄法寺漆は細々と守り続けられてきました。

戦後には漆林の荒廃も進みましたが、1977年(昭和52年)から浄法寺町で漆植林に対する補助が開始され、さらに1987年には日本文化財漆協会・岩手県浄法寺漆生産組合による漆の植林が本格化します。
現在では「日本の漆文化を守る会」などの組織的な活動や、二戸市の「うるしびと」制度による後継者育成プログラムが整備され、浄法寺漆のブランド力は再び注目を集めています。

2020年12月には「漆搔き技術」がユネスコ無形文化遺産に登録され、世界的な評価も獲得しました。
伝統と現代需要を結びつける取り組みによって、浄法寺漆は新たな発展の段階に入りつつあるのです。

浄法寺漆(じょうぼうじうるし)の制作工程


浄法寺漆が高く評価される理由のひとつは、採取から塗りに至るまでの工程が非常に丁寧で、一貫した品質管理が行われている点にあります。
漆掻き職人が自然と向き合いながら樹液を採取し、それを精製して不純物を取り除き、透明度と粘りを調整します。

さらに塗師が幾度もの塗りと研ぎを繰り返し、深みのある艶を生み出します。
これらの工程は一見シンプルに見えても、実際には高度な経験と感覚に支えられており、一つひとつの器や作品に表情の違いをもたらします。
まさに浄法寺漆は、自然の恵みと職人技術の融合によって完成する工芸素材なのです。

漆掻き:樹液を採る伝統技法

漆掻きは、漆の木から樹液を採取する作業であり、浄法寺漆の品質を左右する最初の重要工程です。
6月中旬の梅雨入りから10月下旬まで約5ヶ月間にわたって木の幹に細かく傷を入れ、にじみ出た樹液を一滴ずつ集めます。

浄法寺漆では「殺し掻き」と呼ばれる方法を用い、1本の木から採れる量は約200g(牛乳瓶1本分)程度であり、これが漆の希少性を生み出しています。
採取は繊細な技術を必要とし、4日間の間隔を空けながら同じ木を回るサイクルで、木の健全性を保ちながら最大限の樹液を採取します。
1年間で漆を採り尽くした後、その役目を終えた木は伐採されます。

採れた生漆は、そのままでは粘りが強すぎるため、次の精製工程で加工されます。
漆掻き職人の経験と判断力が高品質な漆の土台をつくるため、この作業は産地の伝統を守る核心といえるでしょう。

精製:透明度と粘度を調整する工程

採取された生漆は、精製によって不純物や水分を取り除き、使用に適した状態に仕上げられます。
精製は「ナヤシ」(攪拌して漆の成分を均一化)と「クロメ」(加熱して水分を蒸発)という作業を繰り返すことで行われ、透明度や粘度を整えるのが目的です。

浄法寺漆は特に透明度が高く、薄く塗ってもムラになりにくいという特徴があります。
精製によって茶褐色の生漆は半透明な飴色の「透漆」となり、さらに鉄粉を加えることで深みのある「黒漆」が生まれます。
この工程では、用途に応じて「透漆」「黒漆」「朱漆」といった種類に分けられ、透漆は拭き漆や木地呂塗に、黒漆は上塗りに、色漆は透漆に各種顔料を混ぜて製作され、器や建築修復に使い分けられます。

精製の巧拙は仕上がりの美しさに直結するため、長年の経験を積んだ職人が担うことが多いです。
特に浄法寺漆は粘り、透明度、硬化後の強度に優れ、その品質の高さから国宝や重要文化財の修復にも使用される最高級の精製漆として評価されています。
ここで完成した精製漆が、その後の塗り工程の基盤となります。

塗りと仕上げ:幾度もの塗り重ね

精製漆は、塗師の手によって幾度も塗り重ねられ、磨かれ、仕上げられていきます。
まず下地塗りで布や地粉を用い、器を強化しながら表面を整えます。
次に中塗りを重ね、さらに上塗りを施すことで深みのある艶が現れます。

漆は湿度と温度に反応して硬化するため、塗りと乾燥の環境管理が極めて重要です。
最後に研磨や呂色仕上げを行うことで、吸い付くようなしっとりとした質感が完成します。

浄法寺漆の器は、この長い工程を経て初めて完成し、堅牢さと美しさを兼ね備えた工芸品となります。
塗師の技量と感性が如実に表れるため、作品ごとに微妙な違いが生まれ、それが一点物としての価値を高めているのです。

浄法寺漆(じょうぼうじうるし)の鑑賞ポイント


浄法寺漆は、使って良し、眺めて良しとされる稀有な工芸素材です。
その魅力を深く味わうためには、光沢の奥行きや質感の変化、さらには真正性を確認する知識が欠かせません。

鑑賞にあたって注目すべき点は大きく三つあります。
まず、漆特有の「艶と層の深み」。次に、手触りと経年による質感の変化。
そして最後に、証紙や作家銘を通じた真正性の確かさです。

これらを理解することで、単なる器としてではなく、日本文化を象徴する素材としての浄法寺漆をより豊かに楽しむことができます。

光沢と“層”を見る:艶・透け・深み

浄法寺漆を鑑賞するうえで最初に目を向けたいのは、塗り重ねによって生まれる光沢と層の深みです。
漆は何度も塗りと乾燥を繰り返すことで、透明感のある層が積み重なり、光の角度によって微妙に異なる表情を見せます。

透けるような艶は表面だけでなく奥行きを感じさせ、単なる塗膜を超えた立体的な美を備えています。
また、日常的に使い込むことでこの光沢が落ち着き、しっとりとした輝きへと変化していくのも魅力です。

鑑賞の際には、光の反射や映り込みを観察すると、漆の質の高さと職人の塗り技術の緻密さを実感できるでしょう。

手触り・質感・経年変化の味わい

浄法寺漆の魅力は、見た目の艶だけでなく、手に触れたときの質感にも現れます。
仕上げによっては吸い付くようにしっとりとした感触があり、指先でなでると柔らかな抵抗を感じることができます。

こうした手触りは高品質な漆に特有のものであり、経年使用によってさらに増していきます。
日常で使い込むことで細かな傷がつきますが、それすらも新たな表情を生み、器の味わいを深めます。

数十年を経て現れる落ち着いた艶や色合いの変化は、長く愛用してこそ楽しめるものであり、鑑賞者にとっても「時間を刻む工芸品」としての価値を実感させるでしょう。

証紙・銘・作家名から読み解く真正性

鑑賞の際に忘れてはならないのが、作品の真正性を確認する要素です。
浄法寺漆を用いた製品の真正性を確認するには、複数の認証制度を理解することが重要です。

まず、浄法寺漆そのものについては「浄法寺漆認証制度」があります。
これは二戸市と岩手県が共同で創設した国内唯一の漆の認証制度で、第三者機関による品質審査を経て認証された漆液(荒味漆・生漆)には専用のブランドマークが付けられた認証ラベルが樽に貼付されます。
ただし、この認証は完成品の漆器ではなく、漆液の段階でのみ適用されます。

浄法寺塗の完成品については、国の伝統的工芸品に指定されており、5つの要件を満たした製品には伝統的工芸品産業振興協会発行の「伝統証紙」が貼付されます。
また、2018年12月に「浄法寺漆」は地理的表示(GI)保護制度に登録され、品質と産地が法的に保護されています。

作家が刻んだ銘や署名は、その作家の作風や技量を知る手がかりとなります。
さらに、付属の説明書や産地証明書は修理や再塗りを依頼する際にも重要な役割を果たします。

国内で流通している漆の97%以上が中国産などの輸入漆という現状において、これらの認証制度や銘を確認することは、作品の価値を守るために不可欠です。
真正性を見極める眼を持つことで、コレクションとしての価値も一層高まるでしょう。

浄法寺漆(じょうぼうじうるし)の保管・メンテナンス・修理

浄法寺漆の器は丈夫で長持ちする一方、扱い方を誤ると劣化を早めてしまいます。
特に湿度や直射日光に敏感であり、日常の使用後の洗浄や乾燥の仕方ひとつで寿命が変わります。

また、漆器は修理や塗り直しが可能な工芸品でもあり、欠けや摩耗が生じても専門家の手によって再生することができます。
長く愛用するためには「適切な日常ケア」「正しい保管環境」「修理を前提とした使い方」の三点が重要です。

これらを押さえることで、浄法寺漆の器は世代を超えて受け継ぐことができ、文化財のように長い命を宿す存在となります。

日常管理の基本(洗浄・乾燥・扱い方)

日常的な使用後には、中性洗剤を薄めたぬるま湯で優しく洗い、柔らかい布で水分を拭き取って自然乾燥させるのが理想です。
研磨剤入りのスポンジや漂白剤は表面を傷めるため厳禁です。

また、電子レンジや食洗機の使用は避けるべきで、急激な温度変化は塗膜を傷める原因となります。
長時間の水浸けも避け、使ったらすぐに洗うことを習慣づけると安心です。

表面に細かい傷や曇りが出ても、それは経年変化としての魅力であり、漆器ならではの「景色」として楽しむこともできます。
こうした日常管理を心掛けることで、浄法寺漆の器は年月を経るごとに艶を増し、愛着ある存在へと育っていきます。

保管環境と展示の工夫

長期にわたり美しさを保つためには、適切な保管環境が不可欠です。
漆器は湿気が多すぎても乾燥しすぎても劣化しやすいため、温湿度が安定した場所に保管するのが理想です。

特に直射日光は退色やひび割れを招くため避け、収納する際は桐箱や専用の保管箱に入れると安心です。
展示する場合は、強い照明ではなく間接光や自然光を利用し、色や艶の変化を楽しむのもおすすめです。

また、証紙や作家銘の入った付属品は一緒に保管しておくことで、将来的な価値や修理時の証明にも役立ちます。
保管と展示の工夫を組み合わせることで、生活の中で楽しみつつ、資産としての価値も守ることができるでしょう。

修理と再生の可能性

浄法寺漆の器は、欠けや摩耗が生じても修理によって再生できる点が大きな魅力です。
軽微な傷であれば再研磨や部分的な塗り直しで対応可能ですし、欠けや割れがある場合は「金継ぎ」や「漆継ぎ」といった伝統的な補修技法が用いられます。

金継ぎでは金粉を使って割れ目を装飾的に仕上げ、むしろ新しい美を加えることができます。
大規模な修復が必要な場合でも、専門工房や職人に依頼すれば再生できるケースは多く、購入後も安心して使い続けられます。

修理を施した器は、新品にはない深みや物語性を帯びるため、コレクターにとっても大きな価値を持ちます。
浄法寺漆は「直して育てる器」であることを忘れず、修理を前提に長く付き合うのが最良の楽しみ方といえるでしょう。

まとめ

浄法寺の漆は、岩手・二戸を拠点に千年以上受け継がれてきた日本を代表する漆文化の結晶です。
国宝や文化財修復に不可欠な品質を誇り、地元での漆掻きから器づくりまで一体となった循環が息づいています。

しっとりと手に吸い付くような艶や経年変化の味わいは、使うほどに魅力を増し、世代を超えて愛されてきました。
さらに証紙や作家銘による真正性の確認、適切なメンテナンスや修理によって、長く受け継ぐことが可能です。

伝統と現代的な活用の両輪で発展を続ける浄法寺漆は、まさに実用と美術の両面で楽しめる工芸品であり、日本文化の未来を支える貴重な存在といえるでしょう。

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