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Home»アート投資・アートビジネス»TAKUMI NEXTとは?ジェトロが切り拓く日本工芸の海外展開と次世代戦略

TAKUMI NEXTとは?ジェトロが切り拓く日本工芸の海外展開と次世代戦略

2026年1月4日1 Min Read アート投資・アートビジネス 15 Views
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TAKUMI NEXTとは?ジェトロが切り拓く日本工芸の海外展開と次世代戦略
Japan External Trade Organization(JETRO)

TAKUMI NEXT(タクミ・ネクスト)は、ジェトロ(日本貿易振興機構)が推進する、日本の工芸・デザイン分野における海外展開支援プログラムです。優れた技術や美意識を持ちながら、国際市場への接続に課題を抱える工芸事業者や作家を対象に、展示機会の創出、海外バイヤーとのマッチング、ブランディング支援などを一体的に行う点が特徴です。

近年では、欧米やアジアのデザインフェア・見本市への出展を通じて、日本工芸を「伝統」ではなく「現代的価値を持つプロダクト」として発信する役割を担っています。本記事では、TAKUMI NEXTの概要、支援内容、工芸産地にとっての意義を整理し、その実践的な価値を解説します。

目次

  • TAKUMI NEXTとは?ジェトロが推進する日本工芸の海外展開支援プログラム
    • 事業の位置づけ:ジェトロが工芸分野に注力する背景
    • TAKUMI NEXT誕生の経緯と目的
    • 従来の輸出支援事業との違いと特徴
  • TAKUMI NEXTの対象と参加条件
    • 対象分野:工芸品・デザインプロダクト・伝統産業
    • 参加事業者・作家に求められる要件
    • 産地単位・企業単位での参加モデル
  • 提供される主な支援内容
    • 海外市場を見据えた商品改善と発信力強化
    • 海外バイヤーとの商談機会とデジタル発信の強化
    • 海外バイヤー・セレクトショップとのマッチング
  • TAKUMI NEXTが重視する評価軸と選定視点
    • 「伝統性」だけで終わらせない現代性・国際性
    • 素材・技法・ストーリーの編集力
    • 量産ではない工芸品を海外市場に届けるための設計思想
  • 工芸事業者にとっての参加メリット
    • 自社単独では難しい国際舞台へのアクセス
    • 価格設定・仕様・契約条件の国際基準化
    • 中長期的なブランド価値向上への効果
  • 参加前に理解しておきたい注意点
    • 短期的な売上事業ではないという前提
    • 継続的な供給体制・品質管理への要求
    • 海外展開に伴う知財・契約・物流リスク
  • TAKUMI NEXTと今後の日本工芸
    • 「輸出」から「国際文化発信」への転換
    • 若手作家・産地再編との関係性
    • TAKUMI NEXTが果たす中長期的役割
  • まとめ

TAKUMI NEXTとは?ジェトロが推進する日本工芸の海外展開支援プログラム


TAKUMI NEXTは、日本貿易振興機構(ジェトロ)が主導する、日本の伝統工芸・クラフト分野に特化した海外展開支援プログラムです。単なる「輸出促進」にとどまらず、日本の工芸が持つ文化的価値や美意識を、海外市場の文脈に合わせて再編集し、持続的なビジネスへと接続することを目的としています。

近年、海外では日本工芸に対する関心が高まる一方で、価格設定や用途提案、ストーリー設計の不足により、継続的な取引に至らないケースも少なくありません。TAKUMI NEXTは、こうした課題を踏まえ、工芸事業者が国際市場で「選ばれ続ける存在」になるための実践的な支援を行う点に特徴があります。

事業の位置づけ:ジェトロが工芸分野に注力する背景

ジェトロが工芸分野に注力する背景には、日本の製造業構造の変化と、文化資源の国際的価値向上という二つの要因があります。大量生産・価格競争型の輸出モデルが限界を迎える中で、地域性や手仕事性、物語性を備えた工芸品は、高付加価値分野として再評価されてきました。

また、海外の富裕層や美術館、デザイン関係者の間では、日本工芸を「アート」「コレクティブル」として捉える動きが顕著になっています。一方で、工芸事業者の多くは国内市場を主軸としてきたため、海外の流通構造や商習慣、契約実務への対応が課題でした。

ジェトロはこうしたギャップを埋める役割として、工芸を成長分野の一つと位置づけ、専門的な支援体制を整えてきたのです。

TAKUMI NEXT誕生の経緯と目的

TAKUMI NEXTは、従来の展示会出展支援や商談マッチングだけでは不十分であるという反省から生まれました。海外市場では、作品や製品そのものの完成度に加え、「なぜこの工芸が今の時代に必要なのか」という文脈説明が強く求められます。

本プログラムの目的は、日本の工芸を単発の輸出商品ではなく、継続的に評価されるブランドとして育てることにあります。そのため、参加事業者には、製品開発段階から海外市場を想定した視点が求められます。

価格設計、用途提案、シリーズ構成、ビジュアル表現まで含めて見直すことで、国際市場に適応した「次の工芸像」を提示することが、TAKUMI NEXTの核心といえるでしょう。

www.jetro.go.jp
伝統工芸品の輸出を支援するプロジェクト「TAKUMI NEXT 2025」採択企業決定 ―海外...
https://www.jetro.go.jp/news/releases/2025/305d0912ed9e4b74.html

従来の輸出支援事業との違いと特徴

TAKUMI NEXTの最大の特徴は、工芸を「売れる商品」に仕立てることだけを目的としていない点です。従来の輸出支援事業では、展示会出展やバイヤー紹介が中心でしたが、本プログラムでは、工芸の背景にある技術・歴史・思想をどのように翻訳し、海外に伝えるかまで踏み込みます。

具体的には、海外キュレーターやデザイナー視点でのフィードバック、ストーリーテリングの再構築、展示演出の指導などが行われます。これにより、工芸品は「日本的で美しいもの」から、「現代の生活や空間で機能する表現」へと位置づけ直されます。

TAKUMI NEXTは、工芸事業者にとって輸出支援であると同時に、表現とビジネスの両面を更新するための実践的な学習機会でもあるのです。

TAKUMI NEXTの対象と参加条件

TAKUMI NEXTは、日本の工芸を国際市場へと導くことを目的としたプログラムであるため、参加対象や条件も明確に設計されています。単に伝統的であることや高い技術を持つことだけでなく、海外市場に向けて表現やビジネスモデルを更新する意欲が重視されます。

以下では、どのような分野が対象となるのか、参加する事業者や作家に求められる要件、そして産地単位・企業単位という二つの参加モデルの特徴を整理します。

対象分野:工芸品・デザインプロダクト・伝統産業


TAKUMI NEXTの対象分野は、伝統的な技術や素材を活用した、衣・食・住に関わるデザイン性の高い日用品全般です。具体的には、インテリア、テーブルウェア、ファッション、文具、家具、アクセサリーなどが含まれます。重要なのは、地域資源(技術・素材・意匠等)を活用した高付加価値商材であり、現代の生活様式に取り入れられる点です。

いわゆる美術工芸品に限らず、現代のライフスタイルに適合した実用的なデザインプロダクトも広く対象となります。これは、海外市場において日本工芸が、単なる「鑑賞物」としてだけでなく、ストーリー性を持った「豊かな生活を演出するアイテム」として評価されている現状を反映しています。

伝統産業の事業者であっても、産地の技術や素材を活かし、海外市場に訴求できるストーリーや高いデザイン性を備えていれば参加が可能です。
TAKUMI NEXTは、特定の工芸ジャンルに限定せず、海外顧客に対して製品の背景やこだわりを明確に伝えられる発信力と商品力を重視するプログラムといえるでしょう。

参加事業者・作家に求められる要件

参加事業者や作家に求められる最大の要件は、海外展開に対する明確な意思と、改善・調整を受け入れる柔軟性です。製品や作品の完成度が高いことは前提ですが、それ以上に、価格設定、仕様変更、シリーズ構成、説明文の再設計などに主体的に取り組めるかが問われます。

また、海外バイヤーやキュレーターとの対話を想定し、自身の技法や背景を言語化できる力も重要です。英語対応は必須条件ではない場合もありますが、ジェトロや外部専門家のサポートを活かしながら情報発信できる姿勢が求められます。

TAKUMI NEXTは、選抜型プログラムであるため、単に「海外に出したい」という希望だけでなく、継続的な事業展開を見据えた戦略性が評価される点に注意が必要です。

産地単位・企業単位での参加モデル

TAKUMI NEXTでは、個人作家や単独企業による参加に加え、産地単位での参加モデルも想定されています。産地単位の場合、共通の技術や素材を軸に複数の事業者が連携し、統一した世界観やブランドストーリーを構築できる点が強みです。

これは、海外市場において「地域ブランド」として認知を高めるうえで有効でしょう。一方、企業単位・作家単位での参加は、意思決定の速さや表現の一貫性を活かしやすい特徴があります。

いずれのモデルにおいても、重要なのは参加形態そのものではなく、誰がどの役割を担い、どの市場を狙うのかを明確にすることです。TAKUMI NEXTは、画一的な成功モデルを押し付けるのではなく、それぞれの規模や体制に応じた海外展開の形を共に設計するプログラムといえるでしょう。

提供される主な支援内容

TAKUMI NEXTの大きな特徴は、海外展開を「出展して終わり」にしない包括的な支援設計にあります。商品開発、ブランディング、展示、商談、その後の関係構築までを一連のプロセスとして捉え、工芸事業者が国際市場で自立的に活動できる状態を目指します。

以下では、TAKUMI NEXTで提供される代表的な支援内容として、商品開発・ブランディング、国際展示への出展、そして海外の実務パートナーとのマッチングの三点を整理します。

海外市場を見据えた商品改善と発信力強化

TAKUMI NEXTでは、海外バイヤーとの商談を通じた市場適応と発信力の強化が重要なプロセスとなります。海外では、日本工芸の技術力は高く評価される一方で、用途や価格、シリーズ構成が現地ニーズと合致していないという課題がしばしば指摘されます。

そのため本プログラムでは、メンターやバイヤーからのフィードバックを通じ、現地の生活様式に合わせたサイズ展開、色味、用途提案の再考を促します。また、ブランドの魅力を正しく伝えるため、ビジュアル表現やストーリーの整理についても、商談準備の過程でブラッシュアップを図ります。

重要なのは、伝統性を削ることではなく、技術や歴史の「どこを核に据えるか」を明確にして伝えることです。これにより、工芸品は文化的背景を保ちながら、海外市場で理解され、受け入れられる商品へと進化していくのです。

海外バイヤーとの商談機会とデジタル発信の強化

TAKUMI NEXTでは、海外バイヤーとのオンライン商談を主軸に、SNSや特設サイトを活用したデジタルプロモーションを通じて、海外市場での認知獲得と販路開拓を支援します。単なる商談機会の提供にとどまらず、海外市場に精通したメンターによる、効果的な商談資料の作成やプレゼンテーション手法の指導が行われる点が特徴です。

海外バイヤーとの商談では、製品単体のスペックだけでなく、ブランドの世界観や使用シーンの提案力が問われます。そのため、現地のライフスタイルに合わせた「見せ方」や「伝え方」について、専門的なフィードバックを受けることができます。

また、一部の対象市場では、テストマーケティングや現地展示を通じた市場検証の機会も提供され、バイヤーや消費者からの反応を直接得ることが可能です。これらの活動を通じて得られた知見は、次の製品改良やマーケティング戦略に活かされ、継続的な海外展開の基盤となります。

海外バイヤー・セレクトショップとのマッチング

TAKUMI NEXTの支援は、実効性の高い商談機会の創出に重点が置かれています。主な対象となるのは、海外の有力EC事業者やセレクトショップ、百貨店のバイヤーであり、近年ではミュージアムショップやギャラリーを販路に持つバイヤーとの接点も増えています。

海外市場では、単に「モノ」を売るだけでなく、その背景にあるストーリーや、現地のライフスタイルに合わせた提案が求められます。そのため、マッチングに際しては、メンターによる商談資料のブラッシュアップや、バイヤーの視点に立ったプレゼンテーションの準備支援が行われ、成約の確度を高める工夫がなされています。

また、商談を通じて得られたバイヤーからの具体的な要望や評価は、商品改良や次期開発の貴重な指針となります。TAKUMI NEXTは、単発の商談機会を提供するだけでなく、継続的な取引関係を築くための「対話の場」としても機能しています。

TAKUMI NEXTが重視する評価軸と選定視点


TAKUMI NEXTでは、参加事業者や作品を選定する際に、従来の「伝統工芸らしさ」や技術水準だけでは判断しません。重視されるのは、海外市場という異なる文化圏において、日本の工芸がどのような価値を持ち得るかという視点です。

そのため、歴史や技法の正統性に加え、現代性、国際性、そして編集力が重要な評価軸となります。以下では、TAKUMI NEXTが特に重視する三つの選定視点を通じて、なぜ同プログラムが「次の工芸」を志向しているのかを明らかにします。

「伝統性」だけで終わらせない現代性・国際性

TAKUMI NEXTが評価するのは、伝統を守っているかどうかではなく、伝統を現代にどう接続しているかという点です。たとえば、技法や様式が歴史的に正確であっても、現代の生活や空間、価値観と結びついていなければ、海外市場では理解されにくい場合があります。

そのため、選定では、造形や用途、スケール感が現代的であるか、国際的なデザイン文脈と対話できるかが重視されます。これは「伝統を壊す」ことを意味するのではなく、伝統を一度解体し、再構築する姿勢が問われているといえるでしょう。

TAKUMI NEXTは、日本工芸を民族的な記号に留めず、同時代の表現として位置づけ直す視点を高く評価しています。

素材・技法・ストーリーの編集力


海外市場では、素材や技法の希少性だけでは十分な評価につながりません。それらをどのような物語として整理し、誰に、どの文脈で届けるかという編集力が不可欠です。

TAKUMI NEXTでは、作家や事業者が持つ素材選定の理由、工程の必然性、地域との関係性を一貫したストーリーとして語れるかが重要視されます。たとえば、同じ漆や陶土であっても、「なぜその素材なのか」「その素材でなければ成立しない表現は何か」を言語化できるかどうかで、国際的な理解度は大きく変わります。

選定においては、作品そのものの完成度に加え、説明資料やプレゼンテーションを通じて、編集された物語として提示できるかが評価対象となります。

量産ではない工芸品を海外市場に届けるための設計思想

工芸品は本質的に量産に向かない存在であり、その前提を無視した海外展開は持続しません。TAKUMI NEXTが重視するのは、少量生産であることを弱点ではなく価値として成立させる設計思想です。

具体的には、受注生産や限定エディションといった供給モデル、価格の妥当性を説明できる根拠、納期や品質の安定性などが問われます。また、すべてを海外向けに最適化するのではなく、作り手の制作リズムや地域の生産体制を尊重した設計であることも重要です。

TAKUMI NEXTは、工芸を無理にスケールさせるのではなく、適切なサイズで国際市場と接続するための思考と準備が整っているかを評価します。これは、工芸を一過性の輸出商品ではなく、長期的に信頼される文化的プロダクトとして位置づけるための視点といえるでしょう。

工芸事業者にとっての参加メリット

TAKUMI NEXTへの参加は、工芸事業者にとって単なる販路拡大にとどまらない戦略的な意味を持ちます。海外市場への挑戦は、情報不足や実務負担の大きさから、個社単独では実現が難しいのが現実です。

以下では、TAKUMI NEXTが提供する支援を通じて、工芸事業者が得られる具体的なメリットを、国際舞台へのアクセス、実務面の基準整備、そして中長期的なブランド価値の向上という三つの観点から整理します。

自社単独では難しい国際舞台へのアクセス

工芸事業者が海外の美術館、デザインフェア、国際見本市へ単独でアクセスするには、ネットワーク構築や信用獲得に長い時間を要します。TAKUMI NEXTでは、ジェトロの持つ国際ネットワークを活用することで、通常は接点を持ちにくい海外バイヤー、ギャラリー、建築家と直接対話する機会が提供されます。

これは単なる紹介ではなく、「日本工芸」という文脈で事前に関心を持った相手との接点であるため、商談の質が高い点が特徴です。初期段階から適切な舞台に立てることで、事業者は試行錯誤のコストを抑えつつ、国際市場の反応を実地で学ぶことができます。

価格設定・仕様・契約条件の国際基準化

海外展開において多くの工芸事業者が直面するのが、価格設定や契約条件に関する不安です。TAKUMI NEXTでは、為替変動を考慮した価格設計、輸送・保険・関税を踏まえた条件整理、返品や破損対応といった実務面の基準化が支援されます。

これにより、感覚的な価格提示や場当たり的な対応を避け、国際取引に耐えうるビジネス体制を整えることが可能になります。また、サイズや仕様の明確化、梱包基準の整備なども進められるため、取引の再現性と信頼性が向上します。

こうした実務基盤の整備は、一度構築すれば他の海外取引にも応用できる重要な資産となるでしょう。

中長期的なブランド価値向上への効果

TAKUMI NEXTの参加経験は、短期的な売上以上に、中長期的なブランド価値向上に寄与します。国際展や専門家からの評価、展示歴、取引実績は、事業者にとって強力な信用情報となります。

これらは海外だけでなく、国内市場においても評価を高める要素として機能します。また、海外市場を意識した商品開発や表現の見直しは、結果的にブランドの軸を明確にし、発信力を強化します。

TAKUMI NEXTは、工芸事業者に「海外に出るための支援」を提供するだけでなく、自社の価値を再定義し、持続的に成長するための視点を与えるプログラムといえるでしょう。

参加前に理解しておきたい注意点

TAKUMI NEXTは、工芸事業者にとって大きな成長機会をもたらす一方で、参加前に正しく理解しておくべき前提やリスクも存在します。海外展開は華やかな側面が注目されがちですが、実際には中長期的な視点と継続的な体制整備が不可欠です。

以下では、参加を検討する段階で必ず押さえておきたい三つの注意点について整理し、期待値のズレや後戻りを防ぐための視点を提示します。

短期的な売上事業ではないという前提

TAKUMI NEXTは、即座に大きな売上を生むことを目的とした事業ではありません。海外市場では、工芸品の背景理解や信頼構築に時間を要するため、初年度は認知獲得や市場検証が中心となるケースが多いです。

展示会や商談で反応が得られても、実際の取引開始までに数か月から一年以上かかることも珍しくありません。そのため、参加事業者には、短期的な成果を求めすぎず、中長期的にブランドを育てる姿勢が求められます。

TAKUMI NEXTは「売上を作る場」ではなく、「売れ続ける土台を作る場」であるという理解が重要でしょう。

継続的な供給体制・品質管理への要求

海外取引では、一点物であっても一定の品質水準と安定した供給体制が求められます。TAKUMI NEXTを通じて評価を得た場合、追加発注やシリーズ展開の要望が生じる可能性があります。

その際、制作ペース、原材料の確保、品質のばらつき管理ができていなければ、信頼を損ねる結果になりかねません。また、輸送中の破損リスクを踏まえた強度設計や梱包仕様の見直しも重要です。

作家性や一点性を守りつつ、どこまで再現性を確保できるのかを事前に整理しておくことが、海外展開を持続させる鍵となります。

海外展開に伴う知財・契約・物流リスク

海外展開では、知的財産権、契約条件、物流に関するリスクも無視できません。意匠やデザインの模倣、写真データの無断使用、契約内容の解釈違いなどは、実際に起こり得る問題です。

TAKUMI NEXTでは一定のサポートが受けられるものの、最終的な責任は事業者自身にあります。そのため、著作権や意匠権の考え方、契約書の基本構造、輸送・保険の範囲について最低限の理解を持っておく必要があります。

海外市場に出ることは、作品や製品を守る意識を一段階引き上げることでもあります。リスクを正しく把握したうえで参加することが、結果的にTAKUMI NEXTの価値を最大化することにつながるでしょう。

TAKUMI NEXTと今後の日本工芸


TAKUMI NEXTは、工芸品を海外に「売る」ための施策にとどまらず、日本工芸のあり方そのものを国際的な文脈で再定義する取り組みといえます。量や価格で競う輸出モデルから、文化的価値や思想を伝える国際発信へと軸足を移す中で、工芸は新たな役割を担い始めています。

以下では、輸出概念の転換、若手作家や産地再編との関係、そしてTAKUMI NEXTが中長期的に果たす意義を整理し、日本工芸の未来像を展望します。

「輸出」から「国際文化発信」への転換

従来の工芸輸出は、製品を海外市場に流通させること自体が目的化しがちでした。しかしTAKUMI NEXTが志向するのは、工芸を通じて日本の美意識や価値観を伝える「国際文化発信」です。

海外では、工芸品は単なるモノではなく、作り手の思想、地域の風土、時間の積層を含む文化表現として受け取られます。そのため、価格や機能説明だけでなく、背景にある物語をどう提示するかが重要になります。

TAKUMI NEXTは、工芸を文化資源として編集し、現代の国際社会と対話可能な形で提示することで、日本工芸の評価軸を「輸出額」から「文化的影響力」へと転換させつつあります。

若手作家・産地再編との関係性

TAKUMI NEXTは、若手作家や新しい世代の事業者にとっても重要な意味を持ちます。国内市場が縮小する中で、若手が工芸を職業として継続するには、早い段階から国際的な視点を持つことが不可欠です。

本プログラムは、若手作家が自身の表現を過度に迎合させることなく、海外と接続するための思考訓練の場として機能します。また、産地単位での参加を通じて、分業構造やブランド戦略の再編が促される点も見逃せません。

従来の内向きな産地構造を見直し、外部と協働する経験は、産地全体の更新につながります。TAKUMI NEXTは、次世代の担い手と産地の再構築を同時に後押しする装置といえるでしょう。

TAKUMI NEXTが果たす中長期的役割

中長期的に見たとき、TAKUMI NEXTの役割は、個別事業者の海外進出支援を超えたところにあります。それは、日本工芸が国際社会の中でどのような立ち位置を取るのか、その共通言語を育てることです。

成功事例や失敗事例の蓄積、海外からの評価の可視化は、今後の政策設計や教育にも影響を与えるでしょう。また、TAKUMI NEXTを経験した事業者が、国内外でハブとなり、次の世代へ知見を還元する循環も期待されます。

工芸を過去の遺産として守るのではなく、現在進行形の文化として更新し続ける。そのための基盤づくりこそが、TAKUMI NEXTが担う最も重要な中長期的役割といえるでしょう。

まとめ

TAKUMI NEXTは、日本工芸を単なる輸出対象として扱うのではなく、国際社会と対話する「文化的プロダクト」として再定義するための実践的なプログラムです。商品開発や展示支援、マッチングといった具体的な施策に加え、現代性・国際性・編集力を重視する評価軸は、工芸事業者や作家に新たな視点をもたらします。

一方で、短期的な売上を目的としない点や、供給体制・契約・知財といった現実的な課題への対応も不可欠であり、参加には十分な理解と覚悟が求められます。それでも、TAKUMI NEXTを通じて得られる国際的な経験や信用、ブランド価値の蓄積は、日本工芸の未来にとって大きな財産となるでしょう。

本プログラムは、工芸を過去の遺産として保存するだけでなく、次世代へ更新し続けるための中核的な役割を担っており、今後の日本工芸の方向性を考える上で欠かせない取り組みといえます。

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